仕事ストレスに対処するための19のヒント

仕事ストレス

仕事のストレスに悩んでいる人は少なくありません。マインドフルネスの観点から、仕事ストレスには、どのように対処すればいいでしょうか?

1. 仕事ストレスとは

1-1. 今のストレスレベルをチェック

仕事のストレスのレベルは、厚生労働省の5分でできる職場のストレスチェックで、簡単な質問にこたえることによって、調べることができます。自分のストレスのレベルは、時々チェックして把握しておくとよいでしょう。

1-2. 仕事があってもなくても

ほとんどの人は、お金を得るために何らかの仕事をしなければなりません。そのため、仕事のことで何らかのストレスを感じているものです。

その一方で、仕事は、私たちが社会とのつながりを保ち、社会に貢献するための手段でもあります。仕事がないことも、ストレスになります。

たとえば、病気やけがのために働くことができない人は、仕事ができるようになるのなら何を差し出してもいい、どんな仕事でもいいからやりたい、と思うかもしれません。

また、失業のために働くことができない人にも大変なストレスがかかります。

1-3. どんな仕事でもストレスがある

世の中には、きつい仕事、危険な仕事、健康に悪い仕事もあります。中でも、決められたことだけをやって、しかも、間違いが許されないような仕事は、心臓病になる率が高いそうです。

その一方で、自分でコントロールできるように見える仕事でも、様々な困難に直面するものです。市場の変化、景気、政府の規制など、自分ではコントロールできないこともたくさんあります。

すべての物事は変化していきます。一見、安定しているように見える仕事でも、例外ではありません。どのような仕事をしていても、仕事を失う可能性があります。派遣社員でも、正社員でも、弁護士でも、医者でも、警察官でも、政治家でも同じことです。

要するに、どんな仕事でも、ストレスはつきものなのです。気休めにならないかもしれませんが、仕事をしている人もしていない人も、すべての人がストレスにさらされているのです。

2. 仕事ストレスへの対処

仕事にストレスがあるのは仕方がないことですが、この仕事ストレスから自分がどのような影響を受けるのかは、コントロールが可能です。ここからは、ストレスへの対処を考えてみましょう。

2-1. リフレッシュする手段を持とう

やりがいのある仕事をしていても、ストレスで燃え尽きてしまう人がいます。現代の社会では、多くの職場で、今よりももっと成果を出すことが常に求められて、そのために努力することが強いられるからです。パソコンやスマートフォンが普及した今の時代では、このような傾向が顕著になってきています。

ジャーナリストとして成功したトニー・シュウォーツがニューヨークタイムズに書いた記事を引用します。

「皮肉なことに、もっと多くの仕事をこなすための最良の方法は、仕事をせずにリフレッシュをすることだ。たとえば、昼間にジムに行くとか、短い時間昼寝するとか、睡眠をきちんととるとか、オフィスにいる時間を短くするとか、もっと休暇をたくさん取るとか。そうすれば、生産性も上がり、仕事のパフォーマンスも健康も向上する。」

仕事ストレスに対処するために、まず、自分にあったリフレッシュの方法を見つけることをお勧めします。

もう一つの対処法は、マインドフルネスを活用することです。

2-2. マインドフルネスを仕事に取り込む

マインドフルネスとは、過去のことや未来のことで思い悩むことなく、「今、ここ」で起こっていることに意識を集中させることです。

仕事上の困難に直面した時、あるいは、難しい仕事をするとき、「今、ここ」でやっていることに意識を集中します。

人間の心は、無意識のうちに、いろいろな考えや感情が浮かんでくるようにできていて、その考えや感情に、無意識のうちに影響を受けています。

マインドフルネスを実践することによって、そのように無意識に浮かんでくる考えや感情に気が付いて、自分の意志で「今、ここ」でやっている仕事の具体的な作業に戻ります。

マインドフルネスを実践することによって、無意識の思考や感情が、いつの間にか、自分の可能性に枠をはめていることに気が付くかもしれません。

たとえば、仕事のストレスがきつくて、仕事を辞めたいと思っていても、無意識のネガティブな思考や感情に気が付いて、冷静に考えてみると、必ずしも辞める必要はないことに気づくもしれません。

また、同じ仕事を継続してやっていると、「毎日が新しい一日で、冒険に満ちていている」ということを忘れてしまうことがあります。その結果、仕事への情熱を失ったり、変化を嫌ったりして、技術革新や新しい流れに取り残されてしまうようになるかもしれません。

マインドフルネスを仕事に持ち込むことによって、「一瞬、一瞬が新しく、毎日が冒険に満ちている」ことに気が付くことでしょう。また、仕事が、やらされていることではなくて、自分が選んでやっている、という意識を持つことができるようになります。

もし将来、仕事内容や職場環境に激しい変化が起こっても、落ち着いて対応できるでしょう。

3. 仕事のストレスにマインドフルに対処するための19のヒント

  1. 朝起きた時、少し時間を取って、自分の意思で仕事に行くのだ、ということを確認する。その日の仕事の予定を確認しつつ、その予定通りにいくとは限らないことを認識する。
  2. 出勤の支度をマインドフルに行う。シャワーを浴びたり、服を着たり、朝食を取ったり、家族に挨拶したりする間、五感を使って呼吸や身体の様子を観察する。
  3. 家を出るときには、家族に気持ちを込めて「いってきます」と声をかける。家族と顔を合わせる機会がない場合は、心のこもったメモを残すようにする。
  4. 通勤途中、歩いたり、ホームや電車で立ったりしているとき、あるいは車で運転している間、、マインドフルに過ごす。職場に到着したら、自分の呼吸を観察してから、笑顔で職場に入る。
  5. 仕事中、時々、身体の感覚を観察する。肩や顔、手、背中に緊張があるときには、姿勢を正して、呼吸を観察し、緊張を取る。
  6. 仕事中、移動する必要があるときには、マインドフルに歩く。どうしても走る必要があるときには、マインドフルに走る。
  7. 仕事中は、一つのことに集中する。仕事に集中している時は、電子メールなどをできるだけ見ない。同時にいくつものことをやろうとすると、かえって効率が落ちるという研究がある。
  8. 時々、休憩を取ってリラックスする。コーヒーを飲んだり煙草を吸うより、できれば3分間外に出て、マインドフルに歩いたり、立ったり、呼吸したりする。あるいは、机で肩や首のストレッチを行う。(マインドフルネスヨガのポーズを参照)
  9. 休憩時間や昼食時間を気の合う仲間と過ごす。あるいは、一人で過ごす。週に1・2回、マインドフルに沈黙して昼食を取るのもよい。
  10. もし可能なら、昼休みに運動する。運動はストレスを減らす。
  11. 1時間に1回ぐらい、立ち止まって呼吸を観察する。この短い瞑想によって、「今、ここ」に意識を戻す。ただし、このことを仕事中に思い出すのは難しい。
  12. 職場では、様々なことをきっかけにして、自分の身体や呼吸に意識を集中し、リラックスする。たとえば、電話の音、ミーティングの準備をしている時、だれかを待っている時などを利用して、呼吸に意識を集中することでリラックスする。
  13. 仕事中、マインドフルなコミュニケーションを心掛ける。特に、自分に対して無関心な人、敵意を持っている人と、どうすれば関係が改善できるか考える。彼らの考えていること、やりたいことは何か、どうやったら彼らをサポートできるかを考える。
  14. 一日の仕事の終わりに、今日やったことと明日やることを振り返る。仕事に優先度をつける。
  15. 職場を出て家に戻るとき、マインドフルに歩く。自分の身体の様子や顔の表情を意識する。心が「今、ここ」に向いているかどうか確認する。
  16. 仕事帰りの途中、できるだけマインドフルに過ごす。スマートフォンなどは極力見ない。
  17. 帰宅したとき、家のドアを開ける前に「帰宅」モードに切り替える。家族に目を合わせて「ただいま」という。
  18. 帰宅したら、すぐに服を着替える。自分の役割を、仕事からプライベートに切り替える。必要なら、この切り替えのために、5分程度時間を取る。
  19. 瞑想は、日常生活の瞬間、瞬間で実現するもの。どのようなことをやっていても、「今、ここ」に意識を向ければ、マインドフルネス瞑想ができる。

4. 科学的な根拠

アメリカ国立衛生研究所の資料によると、8週間のマインドフルネスストレス低減法プログラム(MBSR) は、中間管理職の仕事に関連するストレスを軽減する効果があるそうです。

144人の被験者に対して、ランダム化比較試験を実施して調べたところ、大きな効果が認められたとのことです。この資料では、8週間のMBSRコースが、仕事に関するストレスを低減し、職場における心理的な適応力を強める効果があると、結論づけています。

5. まとめ

どのような仕事をしていても、ストレスはあります。

マインドフルネス瞑想を仕事に取り込むことによって、ストレスを減らすことができます。これを示す科学的な根拠もあります。

マインドフルネスを効率的に身につけるには、8週間継続してマインドフルネス瞑想の練習を実践する必要があります。このために、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。

日本で8週間のマインドフルネスストレス低減法プログラムを受講できるコースは、下のリンクの通りです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法プログラム(MBSR) 8週間コース


出典:
Kabat-Zinn, J. 2013 Full Catastrophe Living

眠れない時のマインドフルネス

眠れない夜

夜、眠りたいのに眠れないのはつらいものです。ここでは眠れない原因とその対策、特にマインドフルネス瞑想による対策を説明します。

1. 眠れない原因と対処法

1-1. ストレス

不眠の原因の一つはストレスです。

日中に何か大きなストレスがあると、寝ている間にいろいろな考えや感情が堂々巡りで心に浮かんできます。

次の日に大事な仕事があるからと心に言い聞かせても、言うことを聞いてくれません。寝ようとすればするほど、緊張と不安が増えて、いよいよ眠れなくなります。

こういう時は、寝る前にマインドフルネス瞑想、特に「座る瞑想」を20分から40分程度実践する習慣をつけるとよいでしょう。

「座る瞑想」では、椅子や床に置いたクッションの上に座って、呼吸、身体の感覚、音、考えや感情を順番に観察し、最後に「何も選択しない瞑想」を行います。これを寝る前に実践すると、私の場合、とても寝付きがよくなります。

1-2. 生活習慣

夜眠れないのは、生活習慣の改善を促す身体からのメッセージかもしれません。次のような生活習慣の改善を実施することで眠れるようになることがあります。

  • 毎朝同じ時間に起きて日の光を浴びる。
  • 定期的に運動を行う。
  • 就寝前の飲食、アルコール、カフェインを控える。
  • 寝床にスマートフォンを持ち込まない。

1-3. 寝すぎ

一晩に眠れる時間は、年を取るとともに減ってきます。厚生労働省の指針によると、25歳で約7時間、45歳で6.5時間、65歳で6時間だそうです。寝床に入っている時間が長すぎるとかえって眠れないこともあります。

1-4. 病気

不眠症が続く場合は何かの病気にかかっているかもしれません。痛みやかゆみのせいで眠れない、夜中に咳が止まらない、呼吸が苦しい、身体がほてるといった症状があって眠れない場合は、専門の医師の診断を受けることを検討しましょう。

2. 寝床で眠れない時

夜中に目が覚めて眠れない時には、寝床でどうすればよいでしょう?

頑張って眠ろうとしても眠れません。こういう時は、寝る努力をするのをあきらめて、マインドフルネス瞑想をしてはどうでしょうか?

2-1. ボディスキャン

たとえば、寝床に入ったまま、ボディスキャンをやってみるといいでしょう。

ボディスキャンは、マインドフルネス瞑想の一つです。仰向けで横になって、身体の各部分を細かく観察していきます。

ボディスキャンの練習中は、できるだけ寝ないように講師からガイダンスされますが、多くの人が途中で寝てしまいます。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) を長年指導してきたジョン・カバットジン博士によると、プログラムの参加者で不眠に悩む人に、毎日の練習に加えて、寝床でボディスキャンの録音を聞くように勧めたところ、大きな効果があったそうです。

2-2. 呼吸を観察する

カバットジン博士によると、寝床で呼吸を観察すると、同じような入眠の効果があるそうです。

私も、夜中に目が覚めて眠れなくなった時は、呼吸を観察するようにしています。寝床で呼吸を観察するには、次の要領でやるといいでしょう。

  1. まず、寝床で自分が眠れないでいることを率直に認める。
  2. 身体中の力を抜く。特に顔の筋肉の力を抜く。
  3. 鼻、胸、腹部など、どこか特定の場所を決めて、その場所の感覚で呼吸を観察する。吸う息の始まり、続き、終わり、ポーズ、吐く息の始まり、続き、終わり、ポーズ、と呼吸の各プロセスをできるだけ細かく観察する。
  4. 途中で、心が呼吸から離れて何か別のことを考えていたら、そのことに気が付いて、そのような自分の 心に優しい気持ちと好奇心で接し、自分の意志で呼吸の観察に戻る。これを繰り返す。

私の経験だと、これを始めるといつの間にか、眠ってしまうことが多いです。眠れないとしても、マインドフルネスの練習になるので、無駄な時間を過ごした感じがしません。

2-3. 寝床から出て瞑想をする

カバットジン博士は、心が高ぶっている場合は、寝床から出て、座る瞑想や歩く瞑想を30分くらいやってみることを勧めています。そうすれば、心が落ち着いて眠りやすくなるとのことです。

3. なぜマインドフルネス瞑想が不眠に効果があるのか

眠れない時は、いろいろな考えが次々に頭の中に浮かんできます。そのことが無意識のうちに、次の考えを生み出す悪循環になっています。

マインドフルネス瞑想では、今この瞬間の身体の感覚や心の中に生じる考えや感情を観察します。これによって、無意識の思考の連鎖を止めることができます。

そうすると、眠ろうと頑張らなくても、眠気の方が向こうからやってきます。

4. 科学的な根拠

アメリカ国立衛生研究所の資料によると、デンマークにおいて、乳がん手術後の不眠で悩む336人に対して、ランダム化比較試験を行い、マインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間のコースに参加した168人と、そうでない168人とを比べたそうです。

そうすると、コースに参加した人は、そうでない人と比べると、睡眠の質に関する問題が大幅に改善し、コース参加の12か月後でもこの傾向は変わらなかったとのことです。

この資料では、MBSRのコースは、統計的に、睡眠の質の改善に関する大きな効果があると認めています。詳細は下のリンクをご参照ください。

睡眠の質に関するMBSRの効果:デンマークの乳がん患者へのランダム化試験の結果

5. まとめ

眠れないときには、ボディスキャンや呼吸の観察など、マインドフルネス瞑想を試してみるとよいでしょう。

マインドフルネス瞑想を効果的に練習するためには、マインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間コースに参加することをお勧めします。日本で参加可能なコースは、下のリンクをご参照ください。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間コース

人間関係の改善にマインドフルネスが役に立つか?

人間関係がストレスの原因だという人は多いことでしょう。ここでは、マインドフルネスがどのように人間関係の改善に役立つか、説明します。

1. なぜ人間関係がストレスの原因になるのか?

世界で最初に農業が始まるのは1万2千年ぐらい前です。私たちは、それまで何万年もの間、集団で狩猟採集生活をしていました。

狩猟採集生活の集団の人数は、だいたい数十人、多くても数百人で、ほとんどの人が生涯を通じての友人か親族でした。

毎日同じ仲間と狩りや採集をして、一緒に火を囲んで食事します。子供は集団で世話をして、集団の中で育ちます。私たちは、そのような社会に適応してきました。私たちの身体と心は、そのころとほとんど変わっていないそうです。

ところが、ここ数千年の間に、社会は大きく変化しました。現代の社会では、生涯を通じて、何千人、何万人という人と出会います。

現代の社会は非常に複雑で、生きていくためには、様々な人間関係を保つことが求められます。その一方で、個々の人間関係は希薄になっていっています。

狩猟採集生活に適応した私たちの身体や心は、現代の社会では人間関係から大きなストレスを受けるのです。これはすべての現代人にとって、共通の悩みだといえるでしょう。

2. 人間関係のストレスを軽減するためには?

それでは、どのようにすれば、人間関係のストレスを軽減できるでしょうか? マインドフルネスが役に立ちます。具体的な方法を見ていきましょう。

2-1. マインドフルに話を聞く

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間のコースでは、マインドフルに相手の話を聞く練習をします。たとえば、2分間、相手の話を聞くことに集中します。基本的に口を挟まず、相手の表情や身振りにも注意を向けます。

人の話を聞いているとき、話を聞きながら、相手の話していることが正しいかどうか判断していたり、どんな返事をするか、どんなアドバイスをするかを考えていたりすることがあります。

マインドフルに聞く練習をするときには、そのようなことを一切考えずに相手の言っていることを理解することに全力を尽くします。「傾聴」とほぼ同じ意味だと思います。

この練習をしたとき、私は、普段、相手の話を聞いていないことを痛感しましたが、もっと印象に残ったことは、自分の話をマインドフルに聞いてもらったときのことです。

次のような感想を持ちました。

  • 相手が自分の話を真剣に聞いているかどうかは、すぐにわかる。
  • 自分の話を真剣に聞いてもらうだけで、とてもうれしい気持ちになる。

人間関係の改善の第一歩は、まず、自分の考えを横に置いておいて、相手の話を真剣に聞くことだと思います。これはいつでも始めることができます。

次のようなテクニックが自然に使えるようになると、なお良いでしょう。

  • 相手の話に相槌を打つ
  • 時々目を合わせて話を聞いていることを知らせる
  • 話を聞いていることがわかるような質問をする

ただし、そんなことに気を遣うよりも、単に相手の話を理解することに全力を挙げることの方が重要だと思います。真剣に相手の話を聞いていれば、そのことは伝わりますし、自然と上に挙げたようなことをすることになります。

2-2. 自分の考えや感情に気づく

マインドフルに話を聞こうとするとき、仲のいい人とか、あまりよく知らない人が相手の場合は比較的簡単にできても、苦手な人を相手にすると、難しいかもしれません。話を聞いている間に、ネガティブな考え、感情が次から次へと浮かんでくるからです。

そういう時には、自分の心に浮かんでくる考えや感情を観察してみるといいでしょう。

ネガティブな考えや感情が心に浮かんで来ることに気が付いても、そのことを否定したり、正当化したり、あるいは、自分を責めたりする必要はありません。

できれば、自分のそのような心をやさしい気持ちと好奇心を持って、心の中の現象として、ありのままに観察しましょう。

人間関係がうまくいかない原因は、相手にあることもありますが、自分の心に無意識のうちに巻き起こる考えや感情にもあるのかもしれません。そのことを観察できるようになれば、自分の対応を変えるきっかけになるかもしれません。

2-3. 人間関係の目的に沿った対応を考える

苦手な人への対応は、その時の自分の無意識な感情に沿ったものになりやすいです。例えば、怒りに駆られている時は、仕返しをしたいと思うかもしれません。相手のことを軽蔑している時には、大事な話でも無視してしまうかもしれません。

もし、苦手な相手に対する自分の考えや感情を意識的に観察することができれば、別の観点から対応方法を考えてみてはどうでしょう。自分の感情は感情としてこれを認めたうえで、その苦手な人との人間関係の目的に照らして一番適切な方法を検討してはどうでしょうか?

たとえば、次のように人間関係の目的と、それに適した対応方法を考えてみましょう。

  • 同僚との関係が自分の仕事の評価のためにあるとしたら、仕事の評価を上げるためには、同僚との関係はどうあるべきか?
  • 妻との関係が自分の人生を豊かにするためにあるとしたら、自分の人生を豊かにするためには、妻との関係はどうあるべきか?

3. それでもダメな場合は?

残念ながら、人間関係はいつでも改善できるとは限りません。相手のあることだからです。

マインドフルに話を聞いて、自分の無意識の考えや感情に気が付いたうえで、人間関係の目的に照らして適切な対応をしても、人間関係を改善できるとは限りません。

でも、自分でできることをやった後は、少し気が楽になるのではないでしょうか?

それでも人間関係から強いストレスを感じる場合は、どうすればよいでしょう?

3-1. 観察することによってストレスの連鎖を防ぐ

まず、そのストレスとそこから引き起こされる考えや感情をありのままに観察しましょう。

このように、意識的に観察することによって、無意識のうちにストレスがネガティブな感情やさらなるストレスを生み出すという悪循環にならないようにしていきましょう。

3-2. 攻撃してくる相手にはどうするか?

現実の世界は、自分の思い通りになるとは限りません。攻撃してくる相手はそのいい例です。一般的に攻撃してくる相手への対処として、次のような方法があります。

  • 屈服する
  • 逃げる
  • 対立する

普通、私たちは、相手や状況でこれらの方法を使い分けます。たとえば、

  • 会社で上司に叱られる ⇒ 屈服する
  • 森でクマに襲われる ⇒ 逃げる
  • 同僚から議論を吹っ掛けられる ⇒ 対立する

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) では、攻撃されたときのもう一つの方法として、合気道でいうところの「同化する」ということを学びます。方法は次のとおりです。

  • 自分の心のバランスを保ちながら、恐怖感があっても、それに左右されることなく、全体を冷静に観察します。
  • 相手の動きに合わせて動き、相手の身体に触れて、同じ方向を向きます。
  • 相手を尊重はしているが恐れてはいないこと、攻撃のエネルギーを自分には向けてほしくないことを伝えます。

4. まとめ

人間関係は、相手があることなので、マインドフルネスで必ず改善できるとは限りません。

ただし、マインドフルに人の話を聞いて、自分の考えや感情をマインドフルに観察し、人間関係の目的に沿った対応をすることで、改善できる場合もあるでしょう。人間関係からくるストレスは、マインドフルネス瞑想によって軽減することができます。

マインドフルネスを習得するためには、8週間、継続してマインドフルネス瞑想を練習する必要があるとされています。

効果的にマインドフルネスを習得するには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のプログラムに参加されることをお勧めします。

日本で参加可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースは、下のリンクの通りです。

日本で参加可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコース

 


出典:

ユヴァル・ノア・ハラリ 2016 サピエンス全史

疼痛とマインドフルネス

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) は、慢性疼痛で悩む患者のために、マサチューセッツ大学医学部でジョン・カバットジン博士が開発したものです。

ここでは、疼痛とマインドフルネスの関係について説明します。

1. マインドフルネスは医療の代替ではない

最初に、慢性疼痛に悩む方がマインドフルネスを試す場合は、まず、医師の診察を受けて、その指示、助言に従うことをお勧めします。マインドフルネスは、医療の代替にはなりません。

2. 慢性疼痛患者の悩み

ペインクリニックや緩和ケア科などの病院では、痛みを緩和するために、様々な治療を行います。心理アセスメントやカウンセリング、神経ブロックの手術、トリガーポイントへのステロイド注射、リドカインの点滴静脈注射、筋肉弛緩剤、鎮痛剤、理学療法、作業療法、針きゅう、マッサージなどの治療が行われます。

ところが、カバットジン博士によると、最新の治療を受けていても、疼痛のために抑うつ状態になったり、仕事につけなかったり、人生を楽しめない方が多いといいます。

3. なぜ、マインドフルネスが慢性疼痛に効果があるのか

3-1. 「今、ここ」に集中する

私たちの過去の痛みの感覚の記憶は、不正確なものです。

カーネマン博士の研究によると、内視鏡検査を受けた人に後で報告してもらうと、その痛さの程度は、検査全体の痛さや検査の長さとは関係なく、検査が終わるときの痛さに関係しているといいます。

また、過去の記憶は、それまでの経験や、その時の感情や健康の度合いによって悪い方にバイアスを受けることがあります。

過去の痛みの記憶は信用できません。

ところが、慢性疼痛の苦しみのかなりの部分は、過去の痛みの記憶とそこから引き起こされる恐怖や絶望などのネガティブな考えや感情を何度も反芻することから来ています。

マインドフルネスでは、「今、ここ」に意識を集中する練習をします。これにより、過去の痛みの記憶と、その記憶に結びついた恐怖や絶望から逃れることができます。

3-2. 「痛み」と「考えや感情」を区別する

私たちが痛みを感じるとき、無意識のうちに、いろいろな考えや感情が引き起こされます。「こんな苦痛に満ちた人生はいやだ」とか、「なぜ私だけこんな目にあうんだ」などです。

「痛み」と、無意識のうちに現れるネガティブな「考えや感情」は、無意識のうちに絡み合って一体化します。そこから苦しみを生み出しています。

ところが、「痛み」とそこから引き起こされる「考えや感情」は、別のものです。ジョン・カバットジン博士によると、これを意識的に観察することによって、苦しみの程度を和らげることができます。

マインドフルネスの練習では、「痛み」を、意識的に、ありのままの現象として観察します。この練習を通じて、「痛み」が「考えや感情」、「私自身」とは、別個のものであることを理解していきます。

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4. 科学的な根拠

4-1. 文献調査から

アメリカ国立衛生研究所の資料によると、1960年から2010年までの間に疼痛とマインドフルネスをベースにしたプログラムに関する調査が16件報告されており、そのうち、ほとんどの調査(16件中10件) で、疼痛の大幅な緩和が確認されています。また、一般的に、その効果はプログラム参加後も継続しているとのことです。

この資料では、マインドフルネスが、慢性疼痛の患者に対し、痛みから来る苦痛を緩和する効果がある、と結論付けています。

4-2. カバットジン博士の研究から

カバットジン博士の研究によると、8週間のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)の慢性疼痛があった参加者のうち、

  • 72%の参加者の苦痛の度合い (PRI: Pain Rating Index) が33% 減少
  • 61%の参加者の苦痛の度合い (PRI: Pain Rating Index) が55% 減少

したそうです。さらに、以下の効果が確認されたそうです。

  • 身体に問題があると感じる程度が、30% 低下。
  • 日常生活が慢性疼痛によって妨げられていると感じる程度が 30% 低下。
  •  ネガティブな感情の状態が 55% 低下。その一方で、ポジティブな感情の状態の増加、不安・抑うつ・敵意の低下、薬剤利用の減少、活動量の増加、気分の向上が一般的にみられた。

さらに、4年間の追跡調査によると、次のことがわかったそうです。

  • 慢性疼痛を持つ参加者のうち93% は、4年後も何らかの形でマインドフル瞑想を継続して実践している。
  • ほとんどすべての慢性疼痛を持つ参加者が、4年後も、日常生活で呼吸に意識を集中することを実践している。
  • 慢性疼痛を持つ参加者のうち42%が、4年後も1週間に3回、15分以上のマインドフル瞑想を定期的に実践している。

以下を含む様々な種類の疼痛で改善がみられたとのことです。

  • 腰痛
  • 首の痛み
  • 肩の痛み
  • 顔面の痛み
  • 頭痛
  • 腕の痛み
  • 腹部の痛み
  • 胸部の痛み
  • 座骨神経痛
  • 足の痛み

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5. マインドフルネスの始め方

カバットジン博士によると、長期間にわたって慢性疼痛に悩まれてきた方は、受け身な態度になってしまう傾向があるそうです。

自分のことを「慢性疼痛の問題を理性的に解決しようとしている一人の人間」と考えて、自分の意志でマインドフルネスに取り組むようにします。

マインドフルネスの習得には8週間という時間がかかります。辛抱強く継続しましょう。また、あまり結果を期待しすぎると、それがマインドフルネス習得の障害になります。結果が出なくても失うものもない、という態度が望ましいです。

マインドフルネスを効果的に習得するには、8週間のマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加するのがいいでしょう。

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) では、様々なマインドフルネス瞑想の方法を学びますが、疼痛で悩む方は、身体の各部分の観察を行う、ボディスキャンが効果的です。

6. ボディスキャンの方法

ボディスキャンでは、床の上に横になり、やさしい気持ちと好奇心を持って自分の身体の各部分を順番に観察します。

身体の痛い部分もありのままに観察して、その瞬間、瞬間の感覚を少しずつ、受け入れていくことを学びます。

さらに、痛い部分を観察するときに沸き起こる自分の考えや感情を、やさしい気持ちと好奇心を持って、ありのままに観察します。

  • 「ひどい痛みだ」
  • 「この痛みには耐えられない」
  • 「なぜ、自分がこんな目にあうんだ」

これらの考えや感情を観察し、これが痛みそのものとは別物であること、それから、これらの考えや感情が観察可能な自然な心の反応であって、自分自身とも別物であることを観察していきます。

7. まとめ

慢性疼痛をお持ちの方がマインドフルネスを試すにあたっては、医師の指示、助言に従いましょう。

マインドフルネスは、さまざまな慢性疼痛に効果があるとされています。これを示す科学的な根拠もあります。

マインドフルネスの習得には、時間と根気が必要です。効果的に学ぶためには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコースは、下のリンクの通りです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース

 


出典:
Kabat-Zinn, J. 2013 Full Catastrophe Living

マインドフルネスダイエット

マインドフルネスダイエットは、マインドフルネスを通じて自分の食欲を観察し、意識することによって、無意識に食べ過ぎないようにするダイエットです。

ここでは、そのやり方を説明します。

1. 食事制限や運動は長続きしない

私は太りやすい体質で、これまでいろいろな食事制限や運動によるダイエットを試してきましたが、どれも長続きしませんでした。

私の食事制限や運動によるダイエットの結論、次のとおりです。

  • 食事制限を行うダイエットは、仮に成功したとしても長続きしない。食欲には勝てない。
  • 運動によるダイエットは、いずれ年を取ったり怪我をしたら運動できなくなり、やっぱり長続きしない。

これまで試してきたダイエットの方法、次のとおりです。

ダイエット法やり方続いた期間と効果
朝ごはんダイエット夕食はできるだけ控えて、朝食は無制限に食べる。半年ぐらい続く。ある程度、効果はあったが、夜の空腹に耐えられず、結局続かなかった。
低炭水化物ダイエット炭水化物は、できるだけ食べない。肉や野菜は無制限に食べる。1年ぐらい続く。体重の管理のコントロールができていたが、炭水化物が食べたくなってやめてしまっていた。
総カロリー制限ダイエット一日の摂取カロリーを計算して、制限内に抑える。半年くらい続く。ある程度効果があったが、カロリーの計算が面倒になってやらなくなった。
水泳ダイエット水泳を1時間、週に3回行う。5年くらい続く。ダイエット効果は不明。肩を痛めてやめてしまった。
ランニングダイエット週末30分走る。2か月くらい続く。膝を痛めてやめてしまった。

ところが、ダイエットをするつもりでやったわけではないのですが、マインドフルネス瞑想、特に食べる瞑想をやるようになってから、いつの間にか、学生時代の体重にもどって、その後、太らないようになりました。

このマインドフルネス瞑想による方法は、自分の食欲やストレスを「観察する」ことによるダイエットです。

すべての人に同じ効果があるかどうかはわかりませんが、ここでは、自分がやったことを「マインドフルネスダイエット」と呼んで、その方法を説明します。

2. マインドフルネスダイエットのやり方

2-1. まず、「食べる瞑想」の練習

この瞑想の目的は、五感を使って食べ物を観察することによって、「今、ここ」で起こっていることに気付くことです。やり方、以下の通りです。

  1. まず、干しブドウか、それに類する小さな食べ物を2粒、用意します。
  2. 一粒目を手に取って、自分の目でできるだけ詳しく観察します。時間をかけて、まるで、「火星人が地球にやってきて初めて干しブドウを見る時のように」、干しブドウを新鮮な気持ちで、初めて見る物体として扱います。表面のしわとか、色とか、光の反射具合とか、できるだけ詳しく観察します。
  3. 次に、指で触った感覚を観察し、耳の近くにもっていって音を観察します。音は聞こえないですが、耳の近くに持ってきて指で転がすと、かすかに音がします。
  4. さらに、においをかいで、唇に乗せて、口の中に入れて、歯の間に乗せて、噛んで、飲み込みます。このそれぞれの過程で、時間をかけて、五感で感じることを、できるだけ詳しく観察します。
  5. 途中で、心の中に、「なんで私こんなことをやっているのだろう」とか、「早く食べてしまいたい」とか、「もっと食べたい」とか、いろいろな考えが起こってきたら、自分の心にそのような考えや感情が起こっていることに気が付いて、自分の意思で「物体」の観察に戻ります。
  6. 残ったもう一粒も同じ要領で観察します。

ここまでの進め方をビデオにしたものがありますので、ご参照ください。

2-2. 食事の時に「食べる瞑想」を取り入れる

次に、普段の食事の時にも、この「食べる瞑想」を取り入れます。

食事の間ずっとこの方法でやると時間がかかりすぎるので、最初の一口か二口だけでも、ゆっくりと時間をかけて、色やにおい、口に入れた感覚、味、歯ざわり、のどを通っていく感覚を観察します。初めてその食べ物を見るつもりでやるといいでしょう。

その時に、自分の心の中に「もっといっぱい食べたい」とか、「早く口に入れたい」、「早く食べ終わりたい」といった考えや苛立ちの感情が起こってくれば、そちらも観察します。

「ダイエットに成功したい」という気持ちが起こってくれば、これも観察します。

この時に、自分の心に対して、やさしい気持ちと好奇心を持つことがコツです。

 

3. なぜ、マインドフルネスがダイエットに効くのか

3-1. 食事への満足感

まず、「食べる瞑想」を食事に取り入れると、食事の最初にゆっくりと味わって食べるようになるので、少量でも満足感が得られやすくなります。それから、このように五感で観察しながら食べると、食べ物がとてもおいしく感じられます。

3-2. 「早く食べたい」、「もっと食べたい」衝動の観察

食べる瞑想をすると、「早く食べたい」、「もっと食べたい」といった衝動に気が付いて、観察することができるようになります。そうすると、無意識で衝動にかられて食べてしまうのではなく、そのような衝動に対して、意識的な対処ができるようになります。

3-3. 自分へのいたわり

マインドフルネスでは、自分の身体や心をありのままに観察しますが、その過程で、自分に対するやさしい気持ちと好奇心を育てていきます。

そうすると、自分の身体をいたわることができるようになり、過食を慎み、身体によいものをちょうどよい分量食べるように心がけるようになります。

4. まとめ

マインドフルネスダイエットは、マインドフルネスの練習のうち、特に「食べる瞑想」を活用したものです。

マインドフルネスの習得には、8週間の間、毎日、マインドフルネス瞑想をする必要があるとされています。

マインドフルネスを効果的に習得するためには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース、以下のとおりです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース

イライラするときの原因と対策

1. まず、イライラしているときにやるべきこと

あなたがイライラしているとしたら、今やるべきことは、STOPです。そう、今やっていることを中止することです。イライラしている状態で何かをやると、失敗してあとで後悔することが多いからです。

STOPは、英語の言葉の頭文字の組み合わせにもなっていて、次のように続きます。

S (Stop)今やっていることを中止します。
T (Take a breath)一息入れます。
O (Observe)状況を観察します。
P (Proceed)次に進みます。

ひとつずつ、どういうことなのか、見てみましょう。

1-1. やっていることを中止する (Stop)

このページを読んでいるあなたは、自分がイライラしていると気が付いているのではないでしょうか?

これはすばらしいことです。なぜなら、イライラしている人は、普通、自分がイライラしていることに気が付かないまま行動を起こして、大抵、大失敗してしまうからです。

そうすると、さらにイライラが募って、火事のように怒りが燃え上がってしまうこともあります。

自分がイライラしていることに気が付いたら、まず、やっていることをその場で中止しましょう。

1-2. 一息入れる (Take a breath)

今やっていることを中止したら、次に、一息入れることをお勧めします。ここで一息入れるとは、文字通り、呼吸をしてみるということでもいいですし、お茶やコーヒーを飲む、というのでもいいでしょう。要は、落ち着きを取り戻すということです。自分の呼吸を意識する瞑想ができると、なおよいでしょう。

一般に怒りのピークは、6秒間だといわれています。少なくともこの時間はやり過ごすことにしましょう。

1-3. 状況を観察する (Observe)

一息入れたら、今、自分が置かれている状況を観察してみましょう。今の自分にどんな選択肢があるでしょうか? 落ち着いて考えてみると、イライラしているときには思いつかなかった選択肢を思いつくかもしれません。

それから、まだイライラが残っていれば、身体や心にどんなことが起きているか観察してみるといいでしょう。

自分の身体や心に対してやさしい気持ちと好奇心を持つことがコツです。そうやっているうちにイライラは収まってくると思います。次の中に当てはまるものがあるでしょうか?

身体の様子

  • 頭に血がのぼる
  • 顔が熱くなる
  • 心臓がどきどきする
  • 手に汗をかく
  • 肩に力が入る
  • 胃が重い

心の様子

  • 怒り
  • 不安
  • 恐怖
  • あせり
  • 不満
  • 悲しみ

1-4. 次に進む (Proceed)

状況を観察して、選択肢がわかったら、次に進みましょう。それまでにやっていたことを続けます。あるいは、観察した結果、別の選択肢を取った方がいいという結論に達したかもしれません。

いずれにせよ、イライラした状態で物事を進めるのではなくて、落ち着いた状態で先に進めたほうがよいでしょう。

2. イライラの原因

さて、次に、イライラの原因は何なのか、考えてみましょう。

2-1. 「戦うか、逃げるか」

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) を開発した、ジョン・カバットジン博士によると、まず、自分に危険が及ぶようなこと、あるいは、社会で自分の地位を脅かすようなことがあると、私たちは、ストレスを感じるそうです。

実際にはそんな危険がなくても、感情を刺激されたり、脅かされると感じたりするだけでも、ストレスを感じます。

これがイライラの始まりです。

私たちの祖先は、自然の中で弱肉強食の生存競争をしてきました。その進化の過程で、自分に危険が迫った場合には、「戦うか、逃げるか」を瞬時に決めて、身体全体を準備させる機能を備えてきたのです。

自分に危険が迫っていると感じると、ストレスホルモンが分泌され、交感神経が刺激されます。その結果、血圧上昇、心拍上昇、気管拡大などが起こります。こうして、筋肉に血や酸素を送って、戦いや逃走に備えます。

ほんの1万年くらい前までは、私たちの祖先は、みんな自然の中で狩猟採集生活をしていました。そのころは、ストレスを感じたら、大抵の場合「戦うか、逃げるか」して、激しい運動をして、それが終わったら、「あー、やれやれ」と言ってリラックスしていたのです。

 

現代に生きる私達人間の身体や心は、そのころと、ほとんど変わっていないそうです。

ところが、私たちの現代の生活は、昔とは全く異なります。

住宅ローンとか、会社の人間関係といった現代の問題は、戦ったり、逃げたりしても解決つかないですし、そのような解決法は許されもしないのです。

そうすると、ストレスホルモンがいつまでも分泌されることになり、イライラが継続、蓄積します。

しかも、そのようなイライラを、時として、私たちは隠そうとします。あるいは、なかったことにしようとします。そうすると、さらにイライラが募り、日常化するのです。

要するに、人間の身体と心は原始人のままなのに、私たちの社会や生活が急に変わってしまったことがイライラの一番の原因です。イライラは、現代に生きる人なら、誰にでも起こることなのです。

2-2. ストレスの元と、その受け止め方

イライラとは、専門的な言葉でいうと、ストレスの元であるストレッサーに対するストレス反応だということもできます。

ストレッサーには、次のようなものがあります。

  • 物理的ストレッサー: 寒さ、暑さ、騒音、放射線など
  • 化学的ストレッサー: 薬物、化学物質など
  • 生理的ストレッサー: 炎症、感染、カビなど
  • 心理的ストレッサー: 怒り、緊張、不安、喪失など

このように、世の中には様々なストレッサーがあるので、イライラの理由は一つではないかもしれません。通常はいくつかのストレッサーが複雑に絡み合っているものです。

ところが、特定のストレッサーがいつも同じストレス反応を引き起こすとも限りません。ストレッサーをどのように受け止めるかで、ストレス反応は異なります。

たとえば、向こうから知っている人が歩いてきている時、自分の受け止め方次第で、無視されたと思って怒りを感じるかもしれませんし、その人が見て見ぬふりしてくれたと感謝の気持ちを感じるかもしれません。

こうしてみると、イライラの直接の原因は、ストレッサーと、そのストレッサーの受け止め方(認知)ということもできます。

ストレスの原因となるストレッサーは、いくつもの原因が複雑に絡み合っているので、特定することが難しいかもしれません。わかったとしても、解決できないかもしれません。

その一方で受け止め方は、自分で変えられる部分です。ストレスはあるものだとして、それをどのように受け止めるとイライラが減らせるのか、考えてみましょう。

3. イライラ解消法のいろいろ

3-1. 選択肢を考える

ストレスに対して対応方法を選ぶことができれば、それだけで、ストレスによる病気になりにくいことが、動物実験からわかっているそうです。

人間にもこれが当てはまります。今のイライラに対してどのような対応方法があるか、その選択肢を検討すること、そして、その選択肢を知っていること自体がイライラを解消する一つの方法になります。イライラするときには、今の自分にどんな選択肢があるのか、リストアップしてみましょう。

3-2. 定期的な運動、気晴らし

定期的な運動をすると、気晴らし、自信の回復などの効果があり、夜眠れるようになる効果も期待できます。イライラを解消するには、効果的な方法だといえるでしょう。

運動は定期的に続けることが大切なので、無理のない範囲で、自分が続けられる運動を選びましょう。たとえば、散歩、ジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動を、週に1・2回、20分から30分続けるところから始めてはどうでしょうか? 家族や友達と一緒に始めると続けやすいです。

その他、何か健康的な気晴らしになることをやってみるのもよいでしょう。家族やお友達とのおしゃべりや、リラクゼーションや健康的な趣味など。

3-3. 不健康な習慣を避ける

イライラする時には、気づかないまま、不健康な対処をしてしまうことがあります。

働きすぎ、過度な飲酒、過食、薬物、たばこ、カフェイン、砂糖等への依存など、不健康な習慣には十分気を付けましょう。

短期的にイライラが解消するように見えても、長期的にはかえってイライラが増えて日常化し、病気を引き起こすかもしれません。

自分がイライラしたときにどのような不健康な対処をする癖があるのか、把握しておくとよいでしょう。このためにも、マインドフルネスが役に立ちます。

3-4. マインドフルネスによる対処

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「今、ここ」で起きている、次のようなことに気が付いている状態のことを言います。

  • 今の自分の身体にどんな感覚が起きているか?
  • 今の自分の心にどんな考えや感情が起きているか?

マインドフルネスがどのようにイライラを防ぐか

たとえば、自分がイライラしているときには、そのことを観察できるようになってきます。そうすると、無意識にイライラしている時と比べて、落ち着いて対処できるようになります。

また、ストレスの元(ストレッサー)に出会った時も、一瞬止まって、どんな気持ちや感情、身体感覚が引き起こされるのか、観察できるようになってきます。これによって、「戦うか、逃げるか」のストレス反応とは異なる、意識的な対処ができるようになってきます。

さらに、自分が不健康な習慣でストレスに対処しようとする時は、その自分の癖に気が付いて、不健康な習慣でイライラをさらに増やすのを防ぐことができるようになってきます。

マインドフルネスは、自分へのやさしい気持ちや好奇心、他人への信頼、忍耐力、一貫性を育てます。そうすると、困難な局面やストレスに直面した時に、イライラすることなく問題を解決することが容易になります。

マインドフルネスを練習するには

マインドフルネスは、意識を「今、ここ」に向けることなので、実は簡単にできます。例えば、目を閉じて、呼吸を2・3分観察してみるとよいでしょう。

ただし、もう少し長い時間マインドフルネスの状態を続けたり、日常生活でイライラを防ぐために活用したりするためには、時間をかけて練習する必要があります。

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) は、アメリカのマサチューセッツ大学医学部でジョン・カバットジン博士が開発した、マインドフルネスによってストレスの低減を目指す8週間のプログラムです。日本でもコースが開かれています。科学的なアプローチを好まれる方は、こちらをお勧めします。

4. まとめ

イライラするときには、まず、ストップ。それから一呼吸おいて、周りや自分を観察しましょう。そうしてから、次の行動に移ります。

イライラするのは、社会の変化が速すぎて、人間の進化が追い付かないから。だから、現代人なら、誰にでも起こることなのです。

イライラの対策は、いろいろありますが、マインドフルネスが最もお勧めです。マインドフルネスの習得には時間がかかるものですが、8週間のマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加することをお勧めします。

日本で受講可能なコース、以下のとおりです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) コース

 


出典:
Kabat-Zinn, J. 2013 Full Catastrophe Living
クリスチャン, D他. 2016 ビッグヒストリー:我々はどこからきてどこに行くのか

 

うつ病とマインドフルネス

私の場合は

私は10年以上前に仕事で大きなストレスを抱えたことがありました。まず、夜眠れなくなり、それから、心に常に不安を抱えるようになって、さらに、自分の不幸を呪い、世の中を呪って、死にたいと思うこともありました。

自分でも心配になってメンタルクリニックで診察をうけると、軽いうつ病と診断され、薬を処方されました。これがマインドフルネス瞑想を本格的に始めるきっかけになりました。

自分の場合は、薬を服用することで、眠れるようになりました。また、マインドフルネス瞑想をやったおかげで、あの時のようなうつ症状になることは、その後ありませんでした。

うつ病が疑われるときには専門の医師に

うつ病が疑われる場合は、まず、専門の医師にかかることをお勧めします。なんの病気なのか診断してもらう必要がありますし、それに応じて投薬などの治療が必要になるかもしれないからです。

マインドフルネス瞑想は、医師と相談してから、試してみることをお勧めします。

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なぜマインドフルネスがうつに効くのか

自分の経験から、マインドフルネス瞑想がうつに効く理由は、2つあると思います。

「今、ここ」に集中する

まず最初の理由は、「今、ここ」に集中しているとき、たとえば、呼吸に集中しているときには、過去のつらかったことや将来の心配のことを考えずにすむことだと思います。

つらい思いを感じる時には、2つの種類があります。

  1. つらいことが実際に起こっている時。
  2. 過去のつらかったことを思い出したり、また起こらないか心配している時。

つらいことが実際に起こっている時につらい思いをするのは、ある程度、仕方がないことですね。

しかし、それを後で何回も思い出したり、また起こるのではないかと心配してつらい思いをする必要はないのです。うつの状態の時は、これを一日中繰り返しています。

マインドフルネスの練習をすることによって、過去のことを思い煩い、まだ来ない将来のことで不安になっている自分の心に気が付いて、「今、ここ」に戻ってくることができるようになります。

自分の身体や心に対して優しい気持ちと好奇心を育てる

次に、マインドフルネス瞑想がうつに効果がある理由として、マインドフルネス瞑想の練習を通じて、自分の身体や心に対してやさしい気持ちと好奇心を持つことができるようになることが挙げられます。

うつ状態の時には、自分や他人を責めたり、人生がつらいと感じたり、将来が不安になったりということを一日中やっています。

シャウナ・シャピロ博士*によると、人間の脳には可塑性があって、「普段練習していることが強化される」そうです。つまり、うつ状態が続くと、自分を責めたり、つらいと感じたり、不安を感じる能力がどんどん強化されてしまいます。

マインドフルネス瞑想では、自分の身体や心をありのままに観察します。このためには、自分の身体や心に対するやさしい気持ちや好奇心が必要です。マインドフルネスの練習を繰り返すことによって、自分の身体や心に対するやさしい気持ちや好奇心が強化されます。

やさしい気持ちや好奇心が強化された脳の方が、自分を責めたり、不安を感じることを強化された脳よりも、ストレスや試練への対処がやりやすいのだと思います。

*The Power of Mindfulness by Shauna Shapiro

科学的な根拠

これまで、いくつかの調査で、マインドフルネスをベースとしたプログラムが、うつに効果があることが証明されています。

以下に、アメリカの国立衛生研究所のウェブサイトに掲載されている論文の概要を紹介します。

退役軍人のうつが軽減した例

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加した79人の退役軍人のコース参加前と参加後を調査したところ、参加後は、不安、うつ、自殺念慮が著しく軽減しました。身体の痛みの強度や身体的な健康の改善はこの期間、見られませんでした。

veterans

韓国の看護学校の例

韓国で50人の看護学校生徒を対象に調査したところ、MBSRを受講したグループは、そうでないグループと比較すると、うつ、不安、ストレスの症状が大幅に改善し、マインドフルネスが向上したました。

マインドフルネスを身につけるには

マインドフルネスを身につけるには、8週間の期間、継続してマインドフルネス瞑想の練習をする必要があり、一人ではなかなか難しいと思います。

科学的に実証された方法で効果的にマインドフルネスを身につけるには、マインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースは、下のリンクをご参照ください。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) 8週間のコース