マインドフルネスとは?

「マインドフルネス」とは、「今、ここ」で起こっていることに意識を向けることです。そうすることによって、心を落ち着かせ、ストレスを減らす効果があるとされています。

最近、この「マインドフルネス」という言葉をさまざまな場面で見聞きするようになりました。たとえば、

  • テレビの健康番組、雑誌などで、ストレスやイライラを抑えるための方法として紹介されています。
  • 瞑想、ヨガ、座禅、医療、宗教などの書籍やセミナーで、マインドフルネスの考えを取り入れた方法が紹介されています。
  • グーグル、インテル、ゴールドマンサックスといった有名企業が、マインドフルネスを従業員の教育や研修に活用しています。

mindful companies

ここでは、マインドフルネスの意味、効果、これを身につける方法などについて、説明します。

マインドフルネスの意味

「マインドフルネス (mindfulness)」は、英語の形容詞「マインドフル (mindful)」 の名詞形です。「マインドフル」は、日本語にすると、「気が付いている」といった意味です。ですから、「マインドフルネス」の意味は、「気が付いているということ」です。また、そのための方法やスキルを意味することもあります。

何に気が付いているかというと、「今、ここ」で起こっていることについてです。

たとえば、

  • 「あなたは今、何をしていますか?」と聞かれて、「ウェブサイトを見ています。」と答えたとします。そうすると、「今、ここ」で自分が何をやっているか気が付いているので、この瞬間はマインドフルな状態です。一瞬だけでもマインドフルネスが実現できたということになります。
  • マインドフルネス瞑想では、今の自分の身体や心の状態を観察します。この観察ができている間は、「今、ここ」で何が起こっているか気が付いているので、マインドフルな状態です。観察ができている間は、マインドフルネスが続いています。

瞑想の途中でも「今、ここ」で起こっていることに気が付いていない状態は、マインドフルとは言えません。「心、ここにあらず」の状態をマインドフルの反対の「マインドレス(mindless)」といいます。

「マインドフルネス」という言葉は、仏教の言葉「正念 (sati)」の英語の訳語でもあります。「正念」とは、悟りを得るために守るべき8個の徳目(八正道)の一つで、常に現在の状態に気が付いているという意味です。

マインドフルネスが世に知られるようになったきっかけは、ジョン・カバットジン博士がマインドフルネスストレス低減法(MBSR) を開発し、世界に広めたことです。このプログラムは、仏教の考え方をもとにしていますが、その効果は科学的な手法で検証されています。

マインドフルネスの定義

マインドフルネスの最も有名な定義は、ジョン・カパットジン博士によるものでしょう。その定義は、次のとおりです。

Paying attention in a particular way : on purpose, in the present moment,
and non-judgmentally. (出典: Jon Kabat-Zinn “Full Catastrophe Living Revised Edition” 2013)

これを日本語に翻訳すると、「意識的に、今の瞬間に、ありのままに、注意を払うこと」ということになります。

「意識的に」

普段、我々は無意識のうちに様々なことを体験し、無意識のうちに様々な感情を起こし、さらに、無意識のうちにその感情の影響を受けています。マインドフルネスでは、自分の意志で意識的に今体験していることを観察します。

「今の瞬間に」

我々は、無意識のうちに漫然と、多くの時間を、過去のことを思い返したり、将来のことを想像して過ごしています。そこから得られる情報は不正確ですし、ネガティブな考えや感情を引き起こしがちです。現実とは、今のこの瞬間に起きていることです。マインドフルネスでは、今の瞬間に起きている現象、例えば身体の感覚や、自分が何を考えているか、ということに注意を向けます。

now mindful

「ありのままに」

普段我々は、自分が体験していること、例えば、身体の痛みを、自分と結び付けて、自分の色眼鏡で見ています。「こんな苦痛に満ちた人生はいやだ」とか「なんて自分はみじめなんだ」などのように。

ところが、実際は、今起こっていること、たとえば身体の痛みは、そこから引き起こされる考えや感情とは別のものです。

ありのままに今起こっていることを観察することによって、現実に起きている現象と、そこから引き起こされる考えや感情や自分自身と区別します。

ネガティブな考えや感情が心を占めているときも、このネガティブな考えや感情をありのままに観察します。そうすることで、そこからさらにネガティブな考えや感情が引き起こされるのを防ぎます。

「注意を払う」

視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感を使って、現実に起きていることを観察します。あるいは、自分の身体の感覚や心に沸き起こる考えや感情を観察します。

座って瞑想をしているときだけではなく、日常生活においても、例えば、顔を洗っている時とか、食事をしている時とか、仕事をしている時とか、電車に乗っている時も、マインドフルネスは可能です。

マインドフルネスの効果

マインドフルネスを身につけると、どんな効果があるのでしょうか?

過去の嫌な記憶、将来の心配から逃れる

マインドフルな状態である間は、自分の心が「今、ここ」に向けられているので、過去のいやな記憶や、苦痛、将来の不安で心を乱されることが少なくなります。

ストレスで悩んでいる人の多くは、今起こっていることよりも、過去の嫌な記憶や苦痛を思い出したり、将来のことを心配して悩んでいます。

マインドフルネスを身につけることによって、自分の心に今起こっているそのような現象に気が付いて、今するべきことに戻ってこられるようになります。

自分の感情や苦痛をコントロール

また、マインドフルネスを身に付けて、自分の心を観察できるようになると、自分の感情をコントロールしやすくなります。

たとえば、怒っている時、自分の怒りの感情に気が付いて、その感情を観察することができれば、だんだんと怒りは収まってくるものです。

また、身体の痛み(疼痛)を、ありのままに観察していくことで、肉体的な苦痛もコントロールしやすくなります。身体の痛み、そこから引き起こされるネガティブな考えや感情、これらにより引き起こされる苦しみをそれぞれ区別して観察し、次第に自分自身から切り離していきます。

自分の身体や心への優しさと好奇心

「脳の可塑性」により、人間の脳は常に変化しています。いつも考えていることが脳内で強化されています。

いつも腹をたてている人は怒りの感情が強化され、いつも孤独を感じている人は、孤独の感情が強化されます。いつも辛い思いをしている人は、辛い思いが強化されます。

マインドフルネスの練習では、自分の身体や心をありのままに観察する過程で、自分に対する優しさや好奇心を育てていきます。やさしい気持ちや好奇心が強化された脳の方が、ネガティブな感情が強化された脳よりも、ストレスや困難への対処がやりやすくなるのです。

科学的な根拠

マインドフルネスを活用したマインドフルネスストレス低減法 (MBSR)や、マインドフルネス認知療法(MBCT) の8週間のコースに参加することにより、様々な身体的ストレスや精神的ストレスを低減する効果があることが科学的に検証されています。詳細は、アメリカ国立衛生研究所の下記リンクご参照ください。

  • 不安障害: 93人の全般性不安障害の患者に対して、マインドフルネスを活用したコースとストレスマネジメント教育のランダム化比較試験をしたところ、いずれの方法でも症状の回復が見られたが、マインドフルネスを活用したコースの方が、効果が大きかった。
  • 喘息: 42人のぜんそく患者のうち、8週間のマインドフルネスを活用したコースを受講したグループの方が1年後の生活の質(quality of life) が向上していた。
  • がん: 166人の乳がん患者のうち、マインドフルネスを活用したコースを受講した患者は、うつ傾向、メンタルヘルスが大きく改善し、免疫反応についても大きな改善が見られた。
  • 慢性疼痛: 1960年から2010年までの間に疼痛とマインドフルネスをベースにしたプログラムに関する調査が16件報告されており、そのうち、ほとんどの調査(16件中10件) で、疼痛の大幅な緩和が確認されている。
  • 糖尿病: 2型糖尿病の患者110人のうち、マインドフルネスを活用したコースを受けたグループの方が、5年後、うつ症状を発症する割合が低く、健康状態も良好だった。ただし、糖尿病のマーカー(アルブミン尿)のレベルは変わりがなかった。
  • 線維筋痛症: 177人の線維筋痛症の女性のうち、マインドフルネスを活用したコースを受講したグループは、健康に関する生活の質 (health-related quality of health)が見られ、さらに、うつ症状、痛み、不安、身体症状などで改善が見られた。
  • 胃腸障害: 90人の過敏性腸症候群の患者のうち、マインドフルネスを活用したコースを受けたグループは、症状の改善がより顕著だった。
  • 心臓病: 左室駆出率が40%以下の成人の心臓病患者208人のうち、マインドフルネスをベースとした8週間のトレーニングを受けたグループの方が、不安やうつが少なく、受講の1年後もこの傾向が続いた。
  • HIV: ART療法を受けた結果、うつ症状の副作用を示しているHIV患者76人のうち、マインドフルネスを活用したコースを受講した患者は、3か月後、および6か月後の調査でARTの副作用を生じる頻度の減少が見られた。
  • ホットフラッシュ: 一日あたり平均5回以上のホットフラッシュが起こる女性110人のうち、マインドフルネスのコースを受講した女性は、ホットフラッシュが起こる率がそれ以外のグループよりも大きく減少した。また、生活の質がそれ以外のグループよりも大きく向上した。
  • 高血圧: 56人の高血圧前症の男女56人のうち、マインドフルネスを活用したコースを受講したグループはそれ以外のグループよりも高血圧の症状の改善が見られた。
  • うつ病: 文献調査によると、マインドフルネスを活用したコースを受講したグループの方が、それ以外の場合よりも、過去3回以上発症したことがある再発性うつ病の再発防止に効果が認められた。
  • 気分障害: 39件の文献を調査したところによると、マインドフルネスをもとにしたセラピーは、不安障害、気分障害の改善に効果が認められる。
  • 睡眠障害: デンマークで乳がん手術後の不眠で悩む336人のうち、マインドフルネスを活用した8週間のコースに参加したグループは、睡眠の質に関する問題が大幅に改善し、12か月後の追跡調査でもこの傾向は変わらなかった。
  • ストレス障害: 中間管理職114人の被験者のうち、8週間のマインドフルネスを活用したコースを受講したグループの方が、仕事に関するストレスを低減し、職場における心理的な適応力を強める効果があることが認められた。

マインドフルネスの活用

マインドフルネスは日常生活の様々な場面で活用することができます。いくつかの例を以下のリンクで紹介します。

マインドフルネスを身につける方法

マインドフルネスは、短い間なら、自分の呼吸を観察するだけで、簡単に実現できます。次の方法を試してみましょう。

  1. 背筋を伸ばして椅子に座る。
  2. 目を閉じる。
  3. 鼻の穴、胸、あるいは、お腹など、呼吸を感じる場所を選ぶ。
  4. その場所の感覚を通じて、呼吸のプロセス(吸う息の始まり、続き、終わり、吐く息の始まり、続き、終わり)を細かく観察する。

ところが、1・2分もすると、すぐにいろいろな考えや感情が心に現れてきて、マインドフルネスは簡単に失われてしまいます。

マインドフルな状態を長続きさせたり、必要なときにマインドフルな状態に入れるようになるには、マインドフルネス瞑想を通じた練習が必要です。

ハーバード大学の研究によると、マインドフルネスを身につけるには、8週間の期間継続した練習が必要とされています。

禅寺やテーラワーダ仏教のお寺で瞑想を実践することでも、マインドフルネスを学ぶことができますが、科学的に検証された方法で、効率よく集中的にマインドフルネスを学ぶためには、マインドフルネスストレス低減法の8週間のコースに参加されることをお勧めします。

8週間のコースでは、以下のようなマインドフルネス瞑想の実践を通じてマインドフルネスを習得していきます。

日本で受講可能なマインドフルネスのコースは、下のリンクをご参照ください。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース

マインドフルネス関連情報

マインドフルネス本

マインドフルネスを理解するための本として、以下の本をお勧めします。

マインドフルネスアプリ

マインドフルネス瞑想を実践するためのアプリとして、英語版ですが、下のリンクの瞑想タイマーが使いやすくて、人気があります。

Insight Timer

NHK番組

最近、NHKでマインドフルネスに関する番組がいくつか放送されました。以下のリンクをご参照ください。

マインドフルネス学会

日本でマインドフルネス学会が設立されています。

まとめ

マインドフルネスは、「今、ここ」に意識を向けることを意味しています。これにより、ストレスを減らす効果が最近注目されています。

マインドフルネスの習得のためには、8週間続けてマインドフルネス瞑想を実践することが必要とされています。効率的にマインドフルネスを習得するためには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加されることをお勧めします。