イライラするときの原因と対処

ここではイライラしている時の原因と対処を特にマインドフルネスの観点から説明します。

1. まず、イライラしているときにやるべきこと

あなたがイライラしているとしたら、今やるべきことは、STOPです。そう、今やっていることを中止することです。イライラしている状態で何かをやると、失敗してあとで後悔することが多いからです。

STOPは、英語の言葉の頭文字の組み合わせにもなっていて、次のように続きます。

S (Stop)今やっていることを中止します。
T (Take a breath)一息入れます。
O (Observe)状況を観察します。
P (Proceed)次に進みます。

ひとつずつ、どういうことなのか、見てみましょう。

1-1. やっていることを中止する (Stop)

このページを読んでいるあなたは、自分がイライラしていると気が付いているのではないでしょうか?

これはすばらしいことです。なぜなら、イライラしている人は、大抵、自分がイライラしていることに気が付かないまま行動を起こして、大失敗してしまうからです。

そうすると、さらにイライラが募って、もっと大きな失敗をしてしまうこともあります。

自分がイライラしていることに気が付いたら、まず、やっていることをその場で中止しましょう。

1-2. 一息入れる (Take a breath)

今やっていることを中止したら、次に、一息入れることをお勧めします。ここで一息入れるとは、文字通り、呼吸をしてみるということでもいいですし、お茶やコーヒーを飲む、というのでもいいでしょう。要は、落ち着きを取り戻すということです。自分の呼吸を意識する瞑想ができると、なおよいでしょう。

一般に怒りのピークは、6秒間だといわれています。少なくとも、この6秒間はやり過ごすことにしましょう。

1-3. 状況を観察する (Observe)

一息入れたら、今、自分が置かれている状況を観察してみましょう。今の自分にどんな選択肢があるでしょうか? 落ち着いて考えてみると、イライラしているときには思いつかなかった選択肢を思いつくかもしれません。

それから、まだイライラが残っていれば、身体や心にどんなことが起きているか観察してみるといいでしょう。

自分の身体や心に対してやさしい気持ちと好奇心を持って観察することがコツです。そうやっているうちにイライラは収まってくると思います。次の中に当てはまるものがあるでしょうか?

身体の様子

  • 頭に血がのぼる
  • 顔が熱くなる
  • 心臓がどきどきする
  • 手に汗をかく
  • 肩に力が入る
  • 胃が重い

心の様子

  • 怒り
  • 不安
  • 恐怖
  • あせり
  • 不満
  • 悲しみ

1-4. 次に進む (Proceed)

状況を観察して、選択肢がわかったら、次に進みましょう。それまでにやっていたことを続けます。あるいは、観察した結果、別の選択肢を取った方がいいという結論に達するかもしれません。

いずれにせよ、イライラした状態で物事を進めるのではなくて、落ち着いた状態で先に進めたほうがよいでしょう。

2. イライラの原因

次に、イライラの原因は何なのか、考えてみましょう。

2-1. 「戦うか、逃げるか」

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) を開発した、ジョン・カバットジン博士によると、自分に危険が及ぶようなこと、あるいは、社会で自分の地位を脅かすようなことがあると、私たちは、ストレスを感じるそうです。

さらに、現実には危険がなくても、自分の地位が脅かされるのではないかと感じたりするだけでも、ストレスを感じます。

これがイライラの始まりです。

私たちの祖先は、自然の中で弱肉強食の生存競争をしてきました。その進化の過程で、自分に危険が迫った場合には、「戦うか、逃げるか」を瞬時に決めて、身体全体を準備させる機能を備えてきたのです。

「戦うか、逃げるか」モードになると、ストレスホルモンが分泌され、交感神経が刺激されます。その結果、血圧上昇、心拍上昇、気管拡大などが起こります。こうして、筋肉に血や酸素を送って、戦いや逃走に備えます。

ほんの1万年くらい前までは、私たちの祖先は、みんな自然の中で狩猟採集生活をしていました。そのころは、敵に出会ったら、大抵の場合「戦うか、逃げるか」の激しい運動でストレスを発散し、それが終わったら、「あー、やれやれ」と言ってリラックスしていたのです。

現代に生きる私達の身体や心は、狩猟採集生活をしていたころと、ほとんど変わっていません。

ところが、私たち現代人の生活は、昔とは全く異なります。

現代の生活では、会社の人間関係や住宅ローンなど、さまざまなことがストレスの原因になりますが、その多くは、身体を張って戦ったり、走って逃げたりしても解決しません。そのような解決法は社会的に許されません。

そうすると、ストレスホルモンがいつまでも分泌されることになり、イライラが継続、蓄積します。

しかも、そのようなイライラを、私たちは隠そうとします。あるいは、なかったことにしようとします。そうすると、さらにイライラが募り、日常化するのです。

要するに、人間の身体と心は原始人のままなのに、私たちの社会や生活が急に変わってしまったことがイライラの一番の原因です。イライラは、現代に生きる人なら、誰にでも起こることなのです。

2-2. ストレスの元と、その受け止め方

イライラとは、専門的な言葉でいうと、ストレスの元であるストレッサーに対するストレス反応だということもできます。

ストレッサーには、次のようなものがあります。

  • 物理的ストレッサー: 寒さ、暑さ、騒音、放射線など
  • 化学的ストレッサー: 薬物、化学物質など
  • 生理的ストレッサー: 炎症、感染、カビなど
  • 心理的ストレッサー: 怒り、緊張、不安、喪失など

このように、世の中には様々なストレッサーがあるので、イライラの理由は一つではないかもしれません。通常はいくつかのストレッサーが複雑に絡み合っているものです。

特定のストレッサーがいつも同じストレス反応を引き起こすとは限りません。ストレッサーをどのように受け止めるかで、ストレス反応は異なります。

たとえば、向こうから知っている人が歩いてきている時、自分の受け止め方次第で、無視されたと思って怒りを感じるかもしれませんし、その人が見て見ぬふりしてくれたと感謝の気持ちを感じるかもしれません。

ストレスの原因となるストレッサーは、いくつもの原因が複雑に絡み合っているので、特定することが難しいかもしれません。わかったとしても、解決できないかもしれません。

その一方で受け止め方は、自分で変えられる部分です。ストレスの原因をなくすことよりも、その受け止め方を変えることでイライラが減らせないか、考えてみましょう。これには、後ほど触れるマインドフルネスが役に立ちます。

3. イライラ解消法のいろいろ

3-1. 選択肢を考える

ストレスに対して対応方法を選ぶことができれば、それだけで、ストレスによる病気になりにくいことが、動物実験からわかっているそうです。

人間にもこれが当てはまります。今のイライラに対してどのような対応方法があるか、その選択肢を検討すること、そして、その選択肢を知っていること自体がイライラを解消する一つの方法になります。イライラするときには、今の自分にどんな選択肢があるのか、リストアップしてみましょう。

3-2. 定期的な運動、気晴らし

定期的な運動をすると、気晴らし、自信の回復などの効果があり、夜眠れるようになる効果も期待できます。イライラを解消するには、効果的な方法だといえるでしょう。

運動は定期的に続けることが大切なので、無理のない範囲で、自分が続けられる運動を選びましょう。たとえば、散歩、ジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動を、週に1・2回、20分から30分続けるところから始めてはどうでしょうか? 家族や友達と一緒に始めると続けやすいです。

その他、何か健康的な気晴らしになることをやってみるのもよいでしょう。家族やお友達とのおしゃべりや、リラクゼーションや健康的な趣味など、いかがでしょうか。

3-3. 不健康な習慣を避ける

イライラする時には、気づかないまま、ストレスに対して不健康な対処をしてしまうことがあります。

働きすぎ、過度な飲酒、過食、薬物、たばこ、カフェイン、砂糖等への依存など、不健康な習慣には十分気を付けましょう。

このような不健康な対処をすると、一時的に脳内で満足を感じる物質が出て、イライラが解消するように見えますが、満足は長続きしません。

これを繰り返すうちに、不健康な対処が習慣化し、これに依存するようになります。そうすると、そのような不健康な習慣がイライラの原因になるという悪循環が起こします。最後には健康を損ねてしまうかもしれません。

自分がイライラしたときにどのような不健康な対処をする癖があるのか、把握しておくとよいでしょう。このためにも、マインドフルネスが役に立ちます。

3-4. マインドフルネスによる対処

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「今、ここ」で起きている、次のようなことに気が付いている状態のことを言います。

  • 今の自分の身体にどんな感覚が起きているか?
  • 今の自分の心にどんな考えや感情が起きているか?

マインドフルネスがどのようにイライラを防ぐか

たとえば、自分がイライラしているときには、そのことを観察できるようになってきます。そうすると、無意識にイライラしている時と比べて、落ち着いて対処できるようになります。

また、ストレスの元(ストレッサー)に出会った時も、一瞬止まって、どんな気持ちや感情、身体感覚が引き起こされるのか、観察できるようになってきます。これによって、「戦うか、逃げるか」のストレス反応とは異なる、意識的な対処ができるようになってきます。

さらに、自分が不健康な習慣でストレスに対処しようとする時は、そのときの心の動きや感情に気が付いて、不健康な習慣に対して、意識的に対応できるようになってきます。

マインドフルネスは、自分へのやさしい気持ちや好奇心、他人への信頼、忍耐力、一貫性を育てます。そうすると、困難な局面やストレスに直面した時の受け止め方が徐々に変わり、イライラしにくくなっていきます。

マインドフルネスを練習するには

マインドフルネスは、意識を「今、ここ」に向けることなので、実は簡単にできます。例えば、目を閉じて、呼吸を2・3分観察してみるとよいでしょう。

ただし、もう少し長い時間マインドフルネスの状態を続けたり、日常生活でイライラに対処するために活用したりするには、時間をかけて練習する必要があります。

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) は、アメリカのマサチューセッツ大学医学部でジョン・カバットジン博士が開発した、マインドフルネスによってストレスの低減を目指す8週間のプログラムです。日本でもコースが開かれています。科学的なアプローチを好まれる方は、こちらをお勧めします。

4. まとめ

イライラするときには、まず、ストップ。それから一呼吸おいて、周りや自分を観察しましょう。そうしてから、次の行動に移ります。

イライラするのは、社会の変化が速すぎて、人間の進化が追い付かないから。だから、現代人なら、誰にでも起こることなのです。

イライラの対策は、いろいろありますが、マインドフルネスがお勧めです。マインドフルネスの習得には時間がかかるものですが、8週間のマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加することをお勧めします。


出典:

  • Kabat-Zinn, J. 2013 Full Catastrophe Living
  • クリスチャン, D他. 2016 ビッグヒストリー:我々はどこからきてどこに行くのか