マインドフルネスヨガとは

マインドフルネスヨガ

マインドフルネスヨガとは、ヨガの実践方法の一つで、特に自分の身体や心の状態に気づいた状態で実践するヨガのことです。マインドフルネスストレス低減法(MBSR) のプログラムで、マインドフルネスの練習のために取り入れられています。

1. マインドフルネスヨガと他のヨガとの違い

もともと、ヨガ(ヨーガ)は、古代インド発祥の宗教的行法です。ヨガの語源は、牛馬につける「くびき」の意味で、心身を制御するということを示唆しているそうです。

1990年台後半から、身体的ポーズ(アーサナ)を中心とした、フィットネス的なヨガが世界中で流行するようになりました。日本のフィットネスクラブ等で行われているのは、こちらの方です。

フィットネス的なヨガは、健康の増進を目的としています。運動の強度や身体の柔軟さ、ヨガの経験に応じて、クラス分けされて、身体を鍛えて、柔軟さを高めるように指導されます。

その一方で、マインドフルネスヨガは、健康の増進よりも、身体や心の感覚を通じて、「今、ここ」で起こっていることに気づくことを目的としています。

したがって、マインドフルネスヨガでは、ヨガのポーズの中でも最も簡単なものが採用され、身体の感覚を観察に適したポーズの順番が設定されています。

マインドフルネスヨガは、ヨガをやったことがない人でも、問題なく実践できます。椅子に座った状態でも可能です。ヨガのポーズに似せて手足を動かすだけでも結構ですし、自分には難しいポーズの時には、身体は動かさずに、心の中でそのポーズをとっているところを想像するだけでも構いません。

講師からは、ポーズの間、身体の感覚を観察すること、それから、身体をいたわっていただくようにガイダンスされます。

マインドフルネスヨガで採用されているヨガのポーズは、身体の感覚を観察するのにとても適しています。

身体の様々な部分を、無理のない範囲で伸ばしたりねじったりして感覚を観察していくので、とても気持ちいいです。

2. マインドフルネスヨガのやり方

マインドフルネスストレス低減法の8週間のコースでは、講師のガイダンスによってポーズを学んでいきます。

「横になった姿勢のヨガ」と「立った姿勢のヨガ」の2種類のヨガのポーズがあり、それぞれ、45分程度の長さです。

「立った姿勢のヨガ」の基本ポーズである「山のポーズ」は、日常生活においても、心が乱れた時に落ち着かせるためのポーズとして推奨されます。

マインドフルネスストレス低減法で使用されるシークエンスは、以下のビデオの通りです。

2-1. 横になった姿勢のヨガ

2-2. 立った姿勢のヨガ

3. まとめ

マインドフルネスヨガとは、ヨガの一種で、「今、ここ」にある身体や心の状態を観察することに主眼を置いています。

ヨガのポーズの中でも、最も簡単なものが採用されているため、ヨガをまったくやったことがない人でも実践することができます。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) のコースでは、講師のガイダンスに従って、「立った姿勢のヨガ」、および、「横になった姿勢のヨガ」の2種類のヨガを練習します。

マインドフルネスヨガを含め、マインドフルネスを学ぶためには、8週間のマインドフルネスストレス低減法(MBSR) プログラムに参加されることをお勧めします。

日本で受講可能なコースは、下のリンクをご参照ください。

日本で受講可能な8週間のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)コース

歩く瞑想のやり方

歩く瞑想(歩行瞑想)は、マインドフルネス瞑想の方法の一つです。歩くときの身体の感覚を観察することにより、意識を「今、ここ」に向けていきます。

歩く瞑想は、マインドフルネスヨガと同様、身体の動きに注意を向けるので、意識を集中しやすく、わかりやすい、というメリットがあります。また、毎日の生活の中に手軽に取り入れることができます。

歩く瞑想は、古来から、テーラワーダ仏教、ヴィパッサナー瞑想などで実践されてきました。歩行瞑想や歩行禅とも呼びます。いろいろなやり方がありますが、ここでは、マインドフルネスストレス低減法(MBSR) で一般的に実践されている方法を紹介します。

1. 歩く瞑想の練習

歩く瞑想を練習するときは、身体の感覚をよく観察するために、最初のうちは、ゆっくりと小さな歩幅で歩く方がやりやすいです。ただし、あまりゆっくり歩くと重心を崩して倒れてしまうおそれがあるので、十分、気を付けましょう。

最初のうちは、注意がそらされないように、2メートルくらいの距離を行ったり来たりするのがいいでしょう。

このような方法で練習していると、他人から不気味がられるので、できれば、人に見られない部屋の中で練習することをお勧めします。

最初は10分ぐらいから始めて、慣れてくれば、30分から60分続けてみます。日常生活で歩くときに取り入れてみてもよいでしょう。

2. 歩く瞑想のガイダンス

以下のビデオ、または音声、テキストをご参照ください。

2-1. ビデオガイダンス(歩く瞑想の練習)

2-3. 音声ガイダンス(歩く瞑想の練習)

2-4. テキストガイダンス(歩く瞑想の練習)

(1) 立つ

まず、まっすぐに立ち上がって、背筋を伸ばして、肩と腕の力を抜きます。手は身体の前か後ろで組みます。あるいは、身体の横に添えておきます。視線は前方の一点に定めます。

身体の様子や心の様子を観察します。自分の身体や心に優しい気持ちと好奇心を持つようにしましょう。心がざわついている場合は、考えや感情を観察して、消えていくのを待ちます。

(2) 観察する身体の場所を決める

片方の足の裏に意識を集中し、この部分の感覚を観察します。車椅子や杖を使っていて、足の裏を観察できない場合は、手や膝など、別の部分を観察してもかまいません。

(3) 身体を動かす前にその意図を意識する

足を動かす動作をする前に、足を動かすという意図を意識します。

(4) 片足を上げて、前に進め、床に下して、体重をかける

片足を上げて、空中を前に進めて、床にこの足を下して、体重をかけるという、一連の動作による足の裏の感覚を観察します。これを左右順番に繰り返します。

あるいは、さらに細かく、「片足を上げる」、「前に進める」、「床に下す」、「体重をかける」の個々の動作に分けて、足を動かす意図とその感覚を観察します。

(5) 心が観察から離れたら、それに気が付いて観察に戻る

いつの間にか、身体の観察から心が逸れて、なにか別のことを考えていることに気が付いたら、次の身体の動作で体の観察に戻ります。

心が乱れていて、身体の動作を観察することが難しいと感じたら、立ち止まって、自分の心の中の考えや感情を観察して、心が静まるのを待ちます。

(6) 身体の向きを変えて、立つ

2メートルぐらい歩いたら、立ち止まって、身体の向きを反対側に変えて引き返します。身体の向きを変えるための個々の動作についても、それぞれ動かす前に動作を意識して、実際の動作の感覚を観察します。

身体の向きを変えたら、また立った姿勢になって、身体と心を観察して、足を動かす意図を確認してから歩き始めます。

3. 歩く瞑想の利点、注意点

3-1. 意識を集中しやすい

歩く瞑想は、動作に意識を集中させるので、意識を集中していることがわかりやすいという利点があります。また、意識が対象から外れたときも、そのことに気が付きやすいです。

歩き始めるとき、心が静まるまで立ち上がった姿勢を続けることによって、マインドレスな状態で瞑想に入るのを防ぐことができます。途中で意識が外れてしまった時も、立ち止まって、心が落ち着くのを待つことも可能です。

3-2. 日常生活での応用

歩く瞑想は、ゆっくりとした速度だけでなく、いろいろな速度で実践することができます。日常生活の中で、通勤や散歩、ジョギングなどでも応用が可能です。

3-3. 視覚が意識をそらしやすい

歩く瞑想の時は、どうしても、視覚が意識をそらす原因になりやすいです。部屋の中で歩く瞑想をするときは、視点を前方の一点に定めてやるのがいいでしょう。

日常生活で歩く瞑想を実践するときには、いろいろなものが視界に入るので、いつの間にか別のことを考えてしまいがちです。だからといって、目をつむったり、伏せたり、視界を制限して歩くのは危険です。

4. まとめ

歩く瞑想は、マインドフルネスヨガのように身体の動作を意識した瞑想なので、意識を集中していることが、わかりやすいという利点があり、日常生活でも活用できるので便利です。その一方で、視覚が意識をそらす原因になりやすいです。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)は、科学的な臨床結果に基づいてカリキュラムが編成されており、歩く瞑想以外にも、座る瞑想、ボディスキャン、マインドフルネスヨガなど様々なマインドフルネス瞑想を取り入れて、効果的にマインドフルネスを学ぶことができます。

日本で、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)を受講可能なコースは下のリンクをご参照ください。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法(MBSR)8週間コース

人間関係の改善にマインドフルネスが役に立つか?

人間関係がストレスの原因だという人は多いことでしょう。ここでは、マインドフルネスがどのように人間関係の改善に役立つか、説明します。

1. なぜ人間関係がストレスの原因になるのか?

世界で最初に農業が始まるのは1万2千年ぐらい前です。私たちは、それまで何万年もの間、集団で狩猟採集生活をしていました。

狩猟採集生活の集団の人数は、だいたい数十人、多くても数百人で、ほとんどの人が生涯を通じての友人か親族でした。

毎日同じ仲間と狩りや採集をして、一緒に火を囲んで食事します。子供は集団で世話をして、集団の中で育ちます。私たちは、そのような社会に適応してきました。私たちの身体と心は、そのころとほとんど変わっていないそうです。

ところが、ここ数千年の間に、社会は大きく変化しました。現代の社会では、生涯を通じて、何千人、何万人という人と出会います。

現代の社会は非常に複雑で、生きていくためには、様々な人間関係を保つことが求められます。その一方で、個々の人間関係は希薄になっていっています。

狩猟採集生活に適応した私たちの身体や心は、現代の社会では人間関係から大きなストレスを受けるのです。これはすべての現代人にとって、共通の悩みだといえるでしょう。

2. 人間関係のストレスを軽減するためには?

それでは、どのようにすれば、人間関係のストレスを軽減できるでしょうか? マインドフルネスが役に立ちます。具体的な方法を見ていきましょう。

2-1. マインドフルに話を聞く

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間のコースでは、マインドフルに相手の話を聞く練習をします。たとえば、2分間、相手の話を聞くことに集中します。基本的に口を挟まず、相手の表情や身振りにも注意を向けます。

人の話を聞いているとき、話を聞きながら、相手の話していることが正しいかどうか判断していたり、どんな返事をするか、どんなアドバイスをするかを考えていたりすることがあります。

マインドフルに聞く練習をするときには、そのようなことを一切考えずに相手の言っていることを理解することに全力を尽くします。「傾聴」とほぼ同じ意味だと思います。

この練習をしたとき、私は、普段、相手の話を聞いていないことを痛感しましたが、もっと印象に残ったことは、自分の話をマインドフルに聞いてもらったときのことです。

次のような感想を持ちました。

  • 相手が自分の話を真剣に聞いているかどうかは、すぐにわかる。
  • 自分の話を真剣に聞いてもらうだけで、とてもうれしい気持ちになる。

人間関係の改善の第一歩は、まず、自分の考えを横に置いておいて、相手の話を真剣に聞くことだと思います。これはいつでも始めることができます。

次のようなテクニックが自然に使えるようになると、なお良いでしょう。

  • 相手の話に相槌を打つ
  • 時々目を合わせて話を聞いていることを知らせる
  • 話を聞いていることがわかるような質問をする

ただし、そんなことに気を遣うよりも、単に相手の話を理解することに全力を挙げることの方が重要だと思います。真剣に相手の話を聞いていれば、そのことは伝わりますし、自然と上に挙げたようなことをすることになります。

2-2. 自分の考えや感情に気づく

マインドフルに話を聞こうとするとき、仲のいい人とか、あまりよく知らない人が相手の場合は比較的簡単にできても、苦手な人を相手にすると、難しいかもしれません。話を聞いている間に、ネガティブな考え、感情が次から次へと浮かんでくるからです。

そういう時には、自分の心に浮かんでくる考えや感情を観察してみるといいでしょう。

ネガティブな考えや感情が心に浮かんで来ることに気が付いても、そのことを否定したり、正当化したり、あるいは、自分を責めたりする必要はありません。

できれば、自分のそのような心をやさしい気持ちと好奇心を持って、心の中の現象として、ありのままに観察しましょう。

人間関係がうまくいかない原因は、相手にあることもありますが、自分の心に無意識のうちに巻き起こる考えや感情にもあるのかもしれません。そのことを観察できるようになれば、自分の対応を変えるきっかけになるかもしれません。

2-3. 人間関係の目的に沿った対応を考える

苦手な人への対応は、その時の自分の無意識な感情に沿ったものになりやすいです。例えば、怒りに駆られている時は、仕返しをしたいと思うかもしれません。相手のことを軽蔑している時には、大事な話でも無視してしまうかもしれません。

もし、苦手な相手に対する自分の考えや感情を意識的に観察することができれば、別の観点から対応方法を考えてみてはどうでしょう。自分の感情は感情としてこれを認めたうえで、その苦手な人との人間関係の目的に照らして一番適切な方法を検討してはどうでしょうか?

たとえば、次のように人間関係の目的と、それに適した対応方法を考えてみましょう。

  • 同僚との関係が自分の仕事の評価のためにあるとしたら、仕事の評価を上げるためには、同僚との関係はどうあるべきか?
  • 妻との関係が自分の人生を豊かにするためにあるとしたら、自分の人生を豊かにするためには、妻との関係はどうあるべきか?

3. それでもダメな場合は?

残念ながら、人間関係はいつでも改善できるとは限りません。相手のあることだからです。

マインドフルに話を聞いて、自分の無意識の考えや感情に気が付いたうえで、人間関係の目的に照らして適切な対応をしても、人間関係を改善できるとは限りません。

でも、自分でできることをやった後は、少し気が楽になるのではないでしょうか?

それでも人間関係から強いストレスを感じる場合は、どうすればよいでしょう?

3-1. 観察することによってストレスの連鎖を防ぐ

まず、そのストレスとそこから引き起こされる考えや感情をありのままに観察しましょう。

このように、意識的に観察することによって、無意識のうちにストレスがネガティブな感情やさらなるストレスを生み出すという悪循環にならないようにしていきましょう。

3-2. 攻撃してくる相手にはどうするか?

現実の世界は、自分の思い通りになるとは限りません。攻撃してくる相手はそのいい例です。一般的に攻撃してくる相手への対処として、次のような方法があります。

  • 屈服する
  • 逃げる
  • 対立する

普通、私たちは、相手や状況でこれらの方法を使い分けます。たとえば、

  • 会社で上司に叱られる ⇒ 屈服する
  • 森でクマに襲われる ⇒ 逃げる
  • 同僚から議論を吹っ掛けられる ⇒ 対立する

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) では、攻撃されたときのもう一つの方法として、合気道でいうところの「同化する」ということを学びます。方法は次のとおりです。

  • 自分の心のバランスを保ちながら、恐怖感があっても、それに左右されることなく、全体を冷静に観察します。
  • 相手の動きに合わせて動き、相手の身体に触れて、同じ方向を向きます。
  • 相手を尊重はしているが恐れてはいないこと、攻撃のエネルギーを自分には向けてほしくないことを伝えます。

4. まとめ

人間関係は、相手があることなので、マインドフルネスで必ず改善できるとは限りません。

ただし、マインドフルに人の話を聞いて、自分の考えや感情をマインドフルに観察し、人間関係の目的に沿った対応をすることで、改善できる場合もあるでしょう。人間関係からくるストレスは、マインドフルネス瞑想によって軽減することができます。

マインドフルネスを習得するためには、8週間、継続してマインドフルネス瞑想を練習する必要があるとされています。

効果的にマインドフルネスを習得するには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のプログラムに参加されることをお勧めします。

日本で参加可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースは、下のリンクの通りです。

日本で参加可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコース

 


出典:

ユヴァル・ノア・ハラリ 2016 サピエンス全史

疼痛とマインドフルネス

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) は、慢性疼痛で悩む患者のために、マサチューセッツ大学医学部でジョン・カバットジン博士が開発したものです。

ここでは、疼痛とマインドフルネスの関係について説明します。

1. マインドフルネスは医療の代替ではない

最初に、慢性疼痛に悩む方がマインドフルネスを試す場合は、まず、医師の診察を受けて、その指示、助言に従うことをお勧めします。マインドフルネスは、医療の代替にはなりません。

2. 慢性疼痛患者の悩み

ペインクリニックや緩和ケア科などの病院では、痛みを緩和するために、様々な治療を行います。心理アセスメントやカウンセリング、神経ブロックの手術、トリガーポイントへのステロイド注射、リドカインの点滴静脈注射、筋肉弛緩剤、鎮痛剤、理学療法、作業療法、針きゅう、マッサージなどの治療が行われます。

ところが、カバットジン博士によると、最新の治療を受けていても、疼痛のために抑うつ状態になったり、仕事につけなかったり、人生を楽しめない方が多いといいます。

3. なぜ、マインドフルネスが慢性疼痛に効果があるのか

3-1. 「今、ここ」に集中する

私たちの過去の痛みの感覚の記憶は、不正確なものです。

カーネマン博士の研究によると、内視鏡検査を受けた人に後で報告してもらうと、その痛さの程度は、検査全体の痛さや検査の長さとは関係なく、検査が終わるときの痛さに関係しているといいます。

また、過去の記憶は、それまでの経験や、その時の感情や健康の度合いによって悪い方にバイアスを受けることがあります。

過去の痛みの記憶は信用できません。

ところが、慢性疼痛の苦しみのかなりの部分は、過去の痛みの記憶とそこから引き起こされる恐怖や絶望などのネガティブな考えや感情を何度も反芻することから来ています。

マインドフルネスでは、「今、ここ」に意識を集中する練習をします。これにより、過去の痛みの記憶と、その記憶に結びついた恐怖や絶望から逃れることができます。

3-2. 「痛み」と「考えや感情」を区別する

私たちが痛みを感じるとき、無意識のうちに、いろいろな考えや感情が引き起こされます。「こんな苦痛に満ちた人生はいやだ」とか、「なぜ私だけこんな目にあうんだ」などです。

「痛み」と、無意識のうちに現れるネガティブな「考えや感情」は、無意識のうちに絡み合って一体化します。そこから苦しみを生み出しています。

ところが、「痛み」とそこから引き起こされる「考えや感情」は、別のものです。ジョン・カバットジン博士によると、これを意識的に観察することによって、苦しみの程度を和らげることができます。

マインドフルネスの練習では、「痛み」を、意識的に、ありのままの現象として観察します。この練習を通じて、「痛み」が「考えや感情」、「私自身」とは、別個のものであることを理解していきます。

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4. 科学的な根拠

4-1. 文献調査から

アメリカ国立衛生研究所の資料によると、1960年から2010年までの間に疼痛とマインドフルネスをベースにしたプログラムに関する調査が16件報告されており、そのうち、ほとんどの調査(16件中10件) で、疼痛の大幅な緩和が確認されています。また、一般的に、その効果はプログラム参加後も継続しているとのことです。

この資料では、マインドフルネスが、慢性疼痛の患者に対し、痛みから来る苦痛を緩和する効果がある、と結論付けています。

4-2. カバットジン博士の研究から

カバットジン博士の研究によると、8週間のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)の慢性疼痛があった参加者のうち、

  • 72%の参加者の苦痛の度合い (PRI: Pain Rating Index) が33% 減少
  • 61%の参加者の苦痛の度合い (PRI: Pain Rating Index) が55% 減少

したそうです。さらに、以下の効果が確認されたそうです。

  • 身体に問題があると感じる程度が、30% 低下。
  • 日常生活が慢性疼痛によって妨げられていると感じる程度が 30% 低下。
  •  ネガティブな感情の状態が 55% 低下。その一方で、ポジティブな感情の状態の増加、不安・抑うつ・敵意の低下、薬剤利用の減少、活動量の増加、気分の向上が一般的にみられた。

さらに、4年間の追跡調査によると、次のことがわかったそうです。

  • 慢性疼痛を持つ参加者のうち93% は、4年後も何らかの形でマインドフル瞑想を継続して実践している。
  • ほとんどすべての慢性疼痛を持つ参加者が、4年後も、日常生活で呼吸に意識を集中することを実践している。
  • 慢性疼痛を持つ参加者のうち42%が、4年後も1週間に3回、15分以上のマインドフル瞑想を定期的に実践している。

以下を含む様々な種類の疼痛で改善がみられたとのことです。

  • 腰痛
  • 首の痛み
  • 肩の痛み
  • 顔面の痛み
  • 頭痛
  • 腕の痛み
  • 腹部の痛み
  • 胸部の痛み
  • 座骨神経痛
  • 足の痛み

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5. マインドフルネスの始め方

カバットジン博士によると、長期間にわたって慢性疼痛に悩まれてきた方は、受け身な態度になってしまう傾向があるそうです。

自分のことを「慢性疼痛の問題を理性的に解決しようとしている一人の人間」と考えて、自分の意志でマインドフルネスに取り組むようにします。

マインドフルネスの習得には8週間という時間がかかります。辛抱強く継続しましょう。また、あまり結果を期待しすぎると、それがマインドフルネス習得の障害になります。結果が出なくても失うものもない、という態度が望ましいです。

マインドフルネスを効果的に習得するには、8週間のマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加するのがいいでしょう。

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) では、様々なマインドフルネス瞑想の方法を学びますが、疼痛で悩む方は、身体の各部分の観察を行う、ボディスキャンが効果的です。

6. ボディスキャンの方法

ボディスキャンでは、床の上に横になり、やさしい気持ちと好奇心を持って自分の身体の各部分を順番に観察します。

身体の痛い部分もありのままに観察して、その瞬間、瞬間の感覚を少しずつ、受け入れていくことを学びます。

さらに、痛い部分を観察するときに沸き起こる自分の考えや感情を、やさしい気持ちと好奇心を持って、ありのままに観察します。

  • 「ひどい痛みだ」
  • 「この痛みには耐えられない」
  • 「なぜ、自分がこんな目にあうんだ」

これらの考えや感情を観察し、これが痛みそのものとは別物であること、それから、これらの考えや感情が観察可能な自然な心の反応であって、自分自身とも別物であることを観察していきます。

7. まとめ

慢性疼痛をお持ちの方がマインドフルネスを試すにあたっては、医師の指示、助言に従いましょう。

マインドフルネスは、さまざまな慢性疼痛に効果があるとされています。これを示す科学的な根拠もあります。

マインドフルネスの習得には、時間と根気が必要です。効果的に学ぶためには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコースは、下のリンクの通りです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース

 


出典:
Kabat-Zinn, J. 2013 Full Catastrophe Living

マインドフルネスダイエット

マインドフルネスダイエットは、マインドフルネスを通じて自分の食欲を観察し、意識することによって、無意識に食べ過ぎないようにするダイエットです。

ここでは、そのやり方を説明します。

1. 食事制限や運動は長続きしない

私は太りやすい体質で、これまでいろいろな食事制限や運動によるダイエットを試してきましたが、どれも長続きしませんでした。

私の食事制限や運動によるダイエットの結論、次のとおりです。

  • 食事制限を行うダイエットは、仮に成功したとしても長続きしない。食欲には勝てない。
  • 運動によるダイエットは、いずれ年を取ったり怪我をしたら運動できなくなり、やっぱり長続きしない。

これまで試してきたダイエットの方法、次のとおりです。

ダイエット法やり方続いた期間と効果
朝ごはんダイエット夕食はできるだけ控えて、朝食は無制限に食べる。半年ぐらい続く。ある程度、効果はあったが、夜の空腹に耐えられず、結局続かなかった。
低炭水化物ダイエット炭水化物は、できるだけ食べない。肉や野菜は無制限に食べる。1年ぐらい続く。体重の管理のコントロールができていたが、炭水化物が食べたくなってやめてしまっていた。
総カロリー制限ダイエット一日の摂取カロリーを計算して、制限内に抑える。半年くらい続く。ある程度効果があったが、カロリーの計算が面倒になってやらなくなった。
水泳ダイエット水泳を1時間、週に3回行う。5年くらい続く。ダイエット効果は不明。肩を痛めてやめてしまった。
ランニングダイエット週末30分走る。2か月くらい続く。膝を痛めてやめてしまった。

ところが、ダイエットをするつもりでやったわけではないのですが、マインドフルネス瞑想、特に食べる瞑想をやるようになってから、いつの間にか、学生時代の体重にもどって、その後、太らないようになりました。

このマインドフルネス瞑想による方法は、自分の食欲やストレスを「観察する」ことによるダイエットです。

すべての人に同じ効果があるかどうかはわかりませんが、ここでは、自分がやったことを「マインドフルネスダイエット」と呼んで、その方法を説明します。

2. マインドフルネスダイエットのやり方

2-1. まず、「食べる瞑想」の練習

この瞑想の目的は、五感を使って食べ物を観察することによって、「今、ここ」で起こっていることに気付くことです。やり方、以下の通りです。

  1. まず、干しブドウか、それに類する小さな食べ物を2粒、用意します。
  2. 一粒目を手に取って、自分の目でできるだけ詳しく観察します。時間をかけて、まるで、「火星人が地球にやってきて初めて干しブドウを見る時のように」、干しブドウを新鮮な気持ちで、初めて見る物体として扱います。表面のしわとか、色とか、光の反射具合とか、できるだけ詳しく観察します。
  3. 次に、指で触った感覚を観察し、耳の近くにもっていって音を観察します。音は聞こえないですが、耳の近くに持ってきて指で転がすと、かすかに音がします。
  4. さらに、においをかいで、唇に乗せて、口の中に入れて、歯の間に乗せて、噛んで、飲み込みます。このそれぞれの過程で、時間をかけて、五感で感じることを、できるだけ詳しく観察します。
  5. 途中で、心の中に、「なんで私こんなことをやっているのだろう」とか、「早く食べてしまいたい」とか、「もっと食べたい」とか、いろいろな考えが起こってきたら、自分の心にそのような考えや感情が起こっていることに気が付いて、自分の意思で「物体」の観察に戻ります。
  6. 残ったもう一粒も同じ要領で観察します。

ここまでの進め方をビデオにしたものがありますので、ご参照ください。

2-2. 食事の時に「食べる瞑想」を取り入れる

次に、普段の食事の時にも、この「食べる瞑想」を取り入れます。

食事の間ずっとこの方法でやると時間がかかりすぎるので、最初の一口か二口だけでも、ゆっくりと時間をかけて、色やにおい、口に入れた感覚、味、歯ざわり、のどを通っていく感覚を観察します。初めてその食べ物を見るつもりでやるといいでしょう。

その時に、自分の心の中に「もっといっぱい食べたい」とか、「早く口に入れたい」、「早く食べ終わりたい」といった考えや苛立ちの感情が起こってくれば、そちらも観察します。

「ダイエットに成功したい」という気持ちが起こってくれば、これも観察します。

この時に、自分の心に対して、やさしい気持ちと好奇心を持つことがコツです。

 

3. なぜ、マインドフルネスがダイエットに効くのか

3-1. 食事への満足感

まず、「食べる瞑想」を食事に取り入れると、食事の最初にゆっくりと味わって食べるようになるので、少量でも満足感が得られやすくなります。それから、このように五感で観察しながら食べると、食べ物がとてもおいしく感じられます。

3-2. 「早く食べたい」、「もっと食べたい」衝動の観察

食べる瞑想をすると、「早く食べたい」、「もっと食べたい」といった衝動に気が付いて、観察することができるようになります。そうすると、無意識で衝動にかられて食べてしまうのではなく、そのような衝動に対して、意識的な対処ができるようになります。

3-3. 自分へのいたわり

マインドフルネスでは、自分の身体や心をありのままに観察しますが、その過程で、自分に対するやさしい気持ちと好奇心を育てていきます。

そうすると、自分の身体をいたわることができるようになり、過食を慎み、身体によいものをちょうどよい分量食べるように心がけるようになります。

4. まとめ

マインドフルネスダイエットは、マインドフルネスの練習のうち、特に「食べる瞑想」を活用したものです。

マインドフルネスの習得には、8週間の間、毎日、マインドフルネス瞑想をする必要があるとされています。

マインドフルネスを効果的に習得するためには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース、以下のとおりです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法の8週間のコース

マインドフルネスの習得には8週間かかる?

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) は、8週間のプログラムです。マインドフルネスの習得には、8週間の期間がかかるとされているからです。なぜ、8週間もかかるのでしょうか?

1. マインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、「今、ここ」で起こっていることに気が付いているということです。たとえば、今の自分の呼吸に意識を集中すれば、その状態がマインドフルネスです。

ただし、その状態は、長続きしません。

実際にやってみると、自分の呼吸に集中しはじめて、2-3分もたてば、いろいろなことが心に浮かんできて、呼吸に意識を集中していたことを忘れてしまいます。たとえば、昨日あった悔しい出来事のこととか、今日の晩御飯のこととか、明日の仕事の段取りとか、いろいろなことが次々と心に浮かんできます。

マインドフルネスを活用して、ストレスを減らすためには、もっと長い間、マインドフルな状態を継続できる必要があります。しかも、ストレスを感じた時にすぐにマインドフルな状態に入れるようにしておく必要があります。

2. なぜマインドフルネスの習得に8週間もかかるのか?

マインドフルネスは、自転車に乗ることと似ていると思います。

自転車に乗れない人が自転車に乗ろうとすると、一瞬だけ自転車の上に乗っかることができますが、すぐに自転車は倒れてしまいます。

自転車に続けて乗れるようになるには、自分の身体を使って練習することが必要です。どんなに本を読んでも、人の話を聞いても自転車に乗れるようにはなりません。

しかし、一旦自転車に乗るコツを身につければ、長い間乗っていられるようになります。それから、必要があればいつでも、自転車の乗ることができますし、大抵の場合、一生、乗り方を忘れるということはありません。

マインドフルネスの習得についても、自分の身体と心で、そのやり方を習得する必要があります。習得には時間がかかりますが、一旦習得すれば、いつでも活用できますし、一生、忘れることもないでしょう。

マサチューセッツ大学医学部のマインドフルネスセンターでは、マインドフルネスストレス低減法プログラムを、40年近く実施してきました。この経験を通じて、マインドフルネスの習得には、8週間の期間、継続してマインドフルネス瞑想を練習する必要がある、としています。

3. 科学的な根拠

ハーバード大学の研究によると、8週間のマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) に参加することにより、脳が実際に変化していることが検証されています。

8週間のコースに参加した人は、参加する前と比べて脳の海馬が肥大していたそうです。この部分は、学習、記憶をつかさどり、自我、愛情、内省にかかわりがあります。

さらに、脳の偏桃体が薄くなっていたそうです。この部分は不安やストレスと関係があるといわれています。

4. マインドフルネスの練習方法

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)では、8週間かけて、ボディスキャン、ヨガ、座る瞑想、歩く瞑想など、様々なマインドフルネス瞑想を継続して実践します。

このマインドフル瞑想の実践の中で、繰り返し、「今、ここ」に意識を向けることでマインドフルネスを習得します。具体的には次の方法によります。

  • 自分の呼吸や身体感覚など、特定の対象に意識を向けて観察する。
  • 自分の意識が呼吸や身体感覚から離れたら、そのことに気が付いて、もとの呼吸や身体感覚の観察に戻る。
  • (さらに進むと)特定の対象を選ばず、自分に起こっていることすべてを観察する。

5. まとめ

マインドフルネスの習得のためには、マサチューセッツ大学での40年近くにわたるマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) プログラムの経験から、8週間の期間がかかることがわかっています。

8週間このプログラムに参加することによって、脳の海馬や偏桃体に変化が表れていることがハーバード大学の研究で実証されています。

マインドフルネスを効果的に習得するためには、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の8週間のコースに参加されることをお勧めします。日本で参加可能なコース、下のリンクの通りです。

日本で参加可能なマインドフルネスストレス低減法(MBSR) の8週間コース

イライラするときの原因と対策

1. まず、イライラしているときにやるべきこと

あなたがイライラしているとしたら、今やるべきことは、STOPです。そう、今やっていることを中止することです。イライラしている状態で何かをやると、失敗してあとで後悔することが多いからです。

STOPは、英語の言葉の頭文字の組み合わせにもなっていて、次のように続きます。

S (Stop)今やっていることを中止します。
T (Take a breath)一息入れます。
O (Observe)状況を観察します。
P (Proceed)次に進みます。

ひとつずつ、どういうことなのか、見てみましょう。

1-1. やっていることを中止する (Stop)

このページを読んでいるあなたは、自分がイライラしていると気が付いているのではないでしょうか?

これはすばらしいことです。なぜなら、イライラしている人は、普通、自分がイライラしていることに気が付かないまま行動を起こして、大抵、大失敗してしまうからです。

そうすると、さらにイライラが募って、火事のように怒りが燃え上がってしまうこともあります。

自分がイライラしていることに気が付いたら、まず、やっていることをその場で中止しましょう。

1-2. 一息入れる (Take a breath)

今やっていることを中止したら、次に、一息入れることをお勧めします。ここで一息入れるとは、文字通り、呼吸をしてみるということでもいいですし、お茶やコーヒーを飲む、というのでもいいでしょう。要は、落ち着きを取り戻すということです。自分の呼吸を意識する瞑想ができると、なおよいでしょう。

一般に怒りのピークは、6秒間だといわれています。少なくともこの時間はやり過ごすことにしましょう。

1-3. 状況を観察する (Observe)

一息入れたら、今、自分が置かれている状況を観察してみましょう。今の自分にどんな選択肢があるでしょうか? 落ち着いて考えてみると、イライラしているときには思いつかなかった選択肢を思いつくかもしれません。

それから、まだイライラが残っていれば、身体や心にどんなことが起きているか観察してみるといいでしょう。

自分の身体や心に対してやさしい気持ちと好奇心を持つことがコツです。そうやっているうちにイライラは収まってくると思います。次の中に当てはまるものがあるでしょうか?

身体の様子

  • 頭に血がのぼる
  • 顔が熱くなる
  • 心臓がどきどきする
  • 手に汗をかく
  • 肩に力が入る
  • 胃が重い

心の様子

  • 怒り
  • 不安
  • 恐怖
  • あせり
  • 不満
  • 悲しみ

1-4. 次に進む (Proceed)

状況を観察して、選択肢がわかったら、次に進みましょう。それまでにやっていたことを続けます。あるいは、観察した結果、別の選択肢を取った方がいいという結論に達したかもしれません。

いずれにせよ、イライラした状態で物事を進めるのではなくて、落ち着いた状態で先に進めたほうがよいでしょう。

2. イライラの原因

さて、次に、イライラの原因は何なのか、考えてみましょう。

2-1. 「戦うか、逃げるか」

マインドフルネスストレス低減法(MBSR) を開発した、ジョン・カバットジン博士によると、まず、自分に危険が及ぶようなこと、あるいは、社会で自分の地位を脅かすようなことがあると、私たちは、ストレスを感じるそうです。

実際にはそんな危険がなくても、感情を刺激されたり、脅かされると感じたりするだけでも、ストレスを感じます。

これがイライラの始まりです。

私たちの祖先は、自然の中で弱肉強食の生存競争をしてきました。その進化の過程で、自分に危険が迫った場合には、「戦うか、逃げるか」を瞬時に決めて、身体全体を準備させる機能を備えてきたのです。

自分に危険が迫っていると感じると、ストレスホルモンが分泌され、交感神経が刺激されます。その結果、血圧上昇、心拍上昇、気管拡大などが起こります。こうして、筋肉に血や酸素を送って、戦いや逃走に備えます。

ほんの1万年くらい前までは、私たちの祖先は、みんな自然の中で狩猟採集生活をしていました。そのころは、ストレスを感じたら、大抵の場合「戦うか、逃げるか」して、激しい運動をして、それが終わったら、「あー、やれやれ」と言ってリラックスしていたのです。

 

現代に生きる私達人間の身体や心は、そのころと、ほとんど変わっていないそうです。

ところが、私たちの現代の生活は、昔とは全く異なります。

住宅ローンとか、会社の人間関係といった現代の問題は、戦ったり、逃げたりしても解決つかないですし、そのような解決法は許されもしないのです。

そうすると、ストレスホルモンがいつまでも分泌されることになり、イライラが継続、蓄積します。

しかも、そのようなイライラを、時として、私たちは隠そうとします。あるいは、なかったことにしようとします。そうすると、さらにイライラが募り、日常化するのです。

要するに、人間の身体と心は原始人のままなのに、私たちの社会や生活が急に変わってしまったことがイライラの一番の原因です。イライラは、現代に生きる人なら、誰にでも起こることなのです。

2-2. ストレスの元と、その受け止め方

イライラとは、専門的な言葉でいうと、ストレスの元であるストレッサーに対するストレス反応だということもできます。

ストレッサーには、次のようなものがあります。

  • 物理的ストレッサー: 寒さ、暑さ、騒音、放射線など
  • 化学的ストレッサー: 薬物、化学物質など
  • 生理的ストレッサー: 炎症、感染、カビなど
  • 心理的ストレッサー: 怒り、緊張、不安、喪失など

このように、世の中には様々なストレッサーがあるので、イライラの理由は一つではないかもしれません。通常はいくつかのストレッサーが複雑に絡み合っているものです。

ところが、特定のストレッサーがいつも同じストレス反応を引き起こすとも限りません。ストレッサーをどのように受け止めるかで、ストレス反応は異なります。

たとえば、向こうから知っている人が歩いてきている時、自分の受け止め方次第で、無視されたと思って怒りを感じるかもしれませんし、その人が見て見ぬふりしてくれたと感謝の気持ちを感じるかもしれません。

こうしてみると、イライラの直接の原因は、ストレッサーと、そのストレッサーの受け止め方(認知)ということもできます。

ストレスの原因となるストレッサーは、いくつもの原因が複雑に絡み合っているので、特定することが難しいかもしれません。わかったとしても、解決できないかもしれません。

その一方で受け止め方は、自分で変えられる部分です。ストレスはあるものだとして、それをどのように受け止めるとイライラが減らせるのか、考えてみましょう。

3. イライラ解消法のいろいろ

3-1. 選択肢を考える

ストレスに対して対応方法を選ぶことができれば、それだけで、ストレスによる病気になりにくいことが、動物実験からわかっているそうです。

人間にもこれが当てはまります。今のイライラに対してどのような対応方法があるか、その選択肢を検討すること、そして、その選択肢を知っていること自体がイライラを解消する一つの方法になります。イライラするときには、今の自分にどんな選択肢があるのか、リストアップしてみましょう。

3-2. 定期的な運動、気晴らし

定期的な運動をすると、気晴らし、自信の回復などの効果があり、夜眠れるようになる効果も期待できます。イライラを解消するには、効果的な方法だといえるでしょう。

運動は定期的に続けることが大切なので、無理のない範囲で、自分が続けられる運動を選びましょう。たとえば、散歩、ジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動を、週に1・2回、20分から30分続けるところから始めてはどうでしょうか? 家族や友達と一緒に始めると続けやすいです。

その他、何か健康的な気晴らしになることをやってみるのもよいでしょう。家族やお友達とのおしゃべりや、リラクゼーションや健康的な趣味など。

3-3. 不健康な習慣を避ける

イライラする時には、気づかないまま、不健康な対処をしてしまうことがあります。

働きすぎ、過度な飲酒、過食、薬物、たばこ、カフェイン、砂糖等への依存など、不健康な習慣には十分気を付けましょう。

短期的にイライラが解消するように見えても、長期的にはかえってイライラが増えて日常化し、病気を引き起こすかもしれません。

自分がイライラしたときにどのような不健康な対処をする癖があるのか、把握しておくとよいでしょう。このためにも、マインドフルネスが役に立ちます。

3-4. マインドフルネスによる対処

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「今、ここ」で起きている、次のようなことに気が付いている状態のことを言います。

  • 今の自分の身体にどんな感覚が起きているか?
  • 今の自分の心にどんな考えや感情が起きているか?

マインドフルネスがどのようにイライラを防ぐか

たとえば、自分がイライラしているときには、そのことを観察できるようになってきます。そうすると、無意識にイライラしている時と比べて、落ち着いて対処できるようになります。

また、ストレスの元(ストレッサー)に出会った時も、一瞬止まって、どんな気持ちや感情、身体感覚が引き起こされるのか、観察できるようになってきます。これによって、「戦うか、逃げるか」のストレス反応とは異なる、意識的な対処ができるようになってきます。

さらに、自分が不健康な習慣でストレスに対処しようとする時は、その自分の癖に気が付いて、不健康な習慣でイライラをさらに増やすのを防ぐことができるようになってきます。

マインドフルネスは、自分へのやさしい気持ちや好奇心、他人への信頼、忍耐力、一貫性を育てます。そうすると、困難な局面やストレスに直面した時に、イライラすることなく問題を解決することが容易になります。

マインドフルネスを練習するには

マインドフルネスは、意識を「今、ここ」に向けることなので、実は簡単にできます。例えば、目を閉じて、呼吸を2・3分観察してみるとよいでしょう。

ただし、もう少し長い時間マインドフルネスの状態を続けたり、日常生活でイライラを防ぐために活用したりするためには、時間をかけて練習する必要があります。

マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) は、アメリカのマサチューセッツ大学医学部でジョン・カバットジン博士が開発した、マインドフルネスによってストレスの低減を目指す8週間のプログラムです。日本でもコースが開かれています。科学的なアプローチを好まれる方は、こちらをお勧めします。

4. まとめ

イライラするときには、まず、ストップ。それから一呼吸おいて、周りや自分を観察しましょう。そうしてから、次の行動に移ります。

イライラするのは、社会の変化が速すぎて、人間の進化が追い付かないから。だから、現代人なら、誰にでも起こることなのです。

イライラの対策は、いろいろありますが、マインドフルネスが最もお勧めです。マインドフルネスの習得には時間がかかるものですが、8週間のマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) のコースに参加することをお勧めします。

日本で受講可能なコース、以下のとおりです。

日本で受講可能なマインドフルネスストレス低減法 (MBSR) コース

 


出典:
Kabat-Zinn, J. 2013 Full Catastrophe Living
クリスチャン, D他. 2016 ビッグヒストリー:我々はどこからきてどこに行くのか